美容健康の話によく出てくる「活性酸素」。活性酸素は体内の細菌やウィルスを殺したり、細胞の老廃物を処理したり血液の循環を助けたりしてくれる、とても役に立つ物質です。それなのに「体に悪い」イメージがあるのはなぜ?
それは、活性酸素が沢山ありすぎると皮脂や体内の脂質と結びついて(=酸化)「体のサビ」と言われる過酸化脂質になってしまうからです。この過酸化脂質は周りの細胞を傷つけてトラブルを引きおこすもと。つまり、活性酸素そのものが悪いのではなく「余分な活性酸素」が悪さをする、というわけです。
余分な活性酸素は美肌の敵でもあります。活性酸素は紫外線や空気中の汚染物質によってもできますが、それが皮脂や角質層、細胞間脂質や細胞膜に含まれる脂質を酸化し、過酸化脂質を作ってしまいます。これは俗に「肌サビ」とも呼ばれ、肌のハリツヤを悪くして肌老化を進め、シミ・ソバカスやニキビを悪化させ、かぶれの原因にもなります。特に皮脂に含まれる「スクワレン」は酸化されやすいので要注意。古い皮脂をしっかり落とすことは、ニキビ対策になるだけでなく活性酸素対策でもあるんですね。
もちろん、体の方も活性酸素にやられっぱなしではありません。体内で作り出される「スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)」「カタラーゼ」「グルタチオンペルオキシダーゼ」などの活性酸素分解酵素は、活性酸素を水に分解。また、抗酸化ビタミン(ビタミンE、ビタミンC、カロテノイドなど)やアミノ酸(ヒスチジン、メチオニンなど)、尿酸、ビリルビン、チオタウリン、グルタチオンなどの各種抗酸化物もそれぞれ協力しながら活性酸素を消してくれます。
皮膚が紫外線を防ぐシステムも活性酸素対策になります。たとえば、表皮の角質層やメラニン顆粒の紫外線ブロック作用。紫外線の強い高地に住む人は角質層が肥厚しがちなことや、日差しの強い土地で生き抜いてきた歴史を持つ黒人の肌にメラニン色素が多いのも、紫外線と活性酸素から体を守ろうと反応した結果なのです。
ただ残念ながら、これらの防御システムがきちんと働くのは若いうちだけ。歳を取るごとにその働きは弱まってしまいます。活性酸素分解酵素を例にとれば、その生産量は40歳になるとピーク時である20歳のときの半分に。加えて環境汚染物質(ダイオキシン、排気ガス、農薬など)やある種の食品添加物、タバコ、電磁波、過度の精神・肉体的ストレス、食べすぎ飲みすぎなども活性酸素を増やします。
ですから、活性酸素の害を減らしたければ上に書いたような物事を避け、抗酸化栄養素を積極的に摂ること...なのですが、現代生活の中でそれを完璧にこなすのは、はっきり言ってムリ。制限ばかりの生活はそれ自体がストレス源にもなってしまいます。「新発売の抗酸化成分入りコスメ買っちゃった!」なんて楽しみを交えながら、できる範囲でのんびり続ける位が丁度よいでしょう。
お肌が傷つくとそこから異物が体に入り込もうとしますが、それによるトラブルを防ぐのが皮膚の免疫システム。細菌などの異物(抗原)が皮膚から侵入すると、ランゲルハンス細胞やマクロファージがそれを捕まえ、リンパ球へと運びます。それを受けたリンパ球は抗体(免疫グロブリン)を作って放出。放たれた抗体が異物と合体して動きを封じると、その隙に好中球やマクロファージが異物を食べてしまいます。
ところが、とりたてて害のない物質にまで免疫が過剰反応することがあります。それがいわゆるアレルギー反応。皮膚に関するアレルギーにはアレルギー性皮膚炎やじんま疹などがあります。肌のむくみや発赤、激しいかゆみなどが伴いますが、そのつらい症状を作り出しているのが肥満細胞(マスト細胞)です。
異物退治のために作られる抗体のひとつ「IgE抗体(免疫グロブリンE)」は、肥満細胞の表面にくっついて働くタイプ。IgE抗体が異物を捕まえると、それがきっかけで肥満細胞が破れて中の化学伝達物質が飛び散ります。その中には炎症物質ヒスタミンも含まれていて、それが神経を刺激してかゆみを起こし、血管から血漿成分をあふれさせてむくみなどの症状を引きおこすのです。
このIgE抗体はできやすい人とそうでない人がいて、前者のほうがアレルギー反応を起こしやすい。つまり、じんま疹にしょっちゅう悩まされる人はIgE抗体ができやすい体質なのかも知れないということです。
しかし、IgE抗体とは関係なくアレルギー症状が出ることもあります。例えば強いストレスを受けると副腎からアドレナリンが大量分泌されますが、これがきっかけで肥満細胞が破れることもあるのです。こうしたケースでは血液検査をしても原因となる物質は見つかりません。原因不明の肌トラブルが、実はストレスによるアレルギー反応だったという可能性もあるわけです。
ストレスはニキビの大敵でしたが、抗酸化や免疫関係でもいいこと無し。もしかしてお肌の一番の敵はストレスなのかも知れません。美肌作りのためにはストレスについての知識も仕入れておいたほうが良さそうですね?
(2009年2月初出)