光によるお肌の老化を「光老化」と言いますが、これも紫外線による害のひとつです。光老化をもたらすのは、主にUV-A。UV-Aは真皮の深いところまで届いてコラーゲンやエラスチンを変質させ、お肌の弾力を奪います。また、表皮は年とともに薄くなるものですが、光老化は表皮を肥厚させます。だから、お肌がゴワゴワしたり、深いシワができたりしてしまうことに。もっとも、光老化がさらに進むと表皮はまた薄くなってゆきます。
光老化しやすいのは、よく日に当たる人です。戸外で働くことが多かったり、アウトドアスポーツを好んだり。チベットやアンデスなど標高の高い土地は低地より紫外線が強く、そういう場所の住人も光老化が早く進みます(注1)。また、それほど日に当たらない生活でも、顔や首、手などは日焼けしやすいので、他の部分より「老けた」感じになりやすいといえます。
UV-Aはメラノサイトを増やし、異物を感知するランゲルハンス細胞を減らします。それもお肌の色がトーンダウンしたり、シミができやすくなったりする元。おまけに、UV-Aは波長が長いので雲やガラスを通り抜けることもできます。だから「今日は曇りだから大丈夫」なんて油断はもってのほか。家や車の中、曇りや雨の日でも十分に気を付けてください(注2)。
このように、無防備に紫外線に当たることはお肌への負担がとても大きくなります。でもそれは、紫外線防止に気を配れば若々しいお肌を長く保てる可能性があるということ。そこで、次は紫外線防止の強い味方、日焼け止めについて見てゆきましょう。
日本で最も紫外線量が多いのは日照時間の長い5月~7月ごろです。1日の中では午前10時~午後2時が一番キケンな時間帯。ですからこの時期・時間帯に外へ出るときは十分な紫外線対策が必要になります。一番効果的なのは、日傘や帽子、手袋、ストール、サングラスなどで物理的に日光をさえぎること。そしてその次に有効なのが日焼け止め(サンスクリーン)。
日焼け止めには、紫外線の防御力によってランクがあります。その目安が「SPF」と「PA」。SPFはサンバーンを起こすUV-Bを防ぐ力、そしてPAはサンタンを起こすUV-Aを防ぐ力を表したものです。
「SPF」は肌に何も塗らないときに比べて、サンバーンが起きる時間を何倍に伸ばせるかで算出します。たとえばSPF30だと、30分で肌が赤くなる人は 30分×30=900分、つまり15時間紫外線を防げる。でも、20分で肌が赤くなる人だと 20分×30=600分なので10時間しかもたない。このように人によって効き目に違いがありますが、大抵の日本人は炎天下15~25分で肌が赤くなるので、それを目安に考えればよいでしょう。
一方「PA」は、何も塗らないときに比べてサンタンをどのくらい遅らせることができるかの目安。UV-Aを防ぐ力が強い順に、PA+++、PA++、PA+とランク分けされています。
実はこの表示、海外ではあまり見かけません。SPFは世界共通のようになっていますが、PA表示が行き渡っているのは今のところ日本だけ。「色の白いは七難隠す」の諺が示すように、日焼けを嫌う国民性が関係しているのかもしれませんね。
さて、SPFやPAの値が高いほど紫外線はよく防げますが、しかしその分肌への負担も増えます。ですから生活シーンに応じて製品を使い分けることが必要です。特に赤ちゃんや幼児は皮膚が薄くてデリケート。日焼け止めのような「化粧品」に頼るより、帽子や長袖の服を活用する方が安心でしょう。
結局のところ、お肌のためには紫外線を浴びないのが一番。でも、全く日に当たらない生活なんてできません。そこを上手に乗り切るにはどうすればよいのでしょう。また、色々な日焼け止めを使い分けるコツがあればそれもぜひ知っておきたいですね。
注1 標高が1,000m上昇するごとに紫外線量は10~12%増加する
注2 UV-Aは窓ガラスを約80%通過するとされる。曇りの日は晴れた日の50~60%、雨の日でも30%の紫外線量がある。
(2009年5月初出)