20代半ばOL。乾燥肌。冷え症なのが悩み。
40代後半主婦。テニスが趣味。肌のくすみが気になる。
30代前半フリーランス。しみ、大人ニキビが悩み。
N美
人間は酸素を吸って生きていくのに、その酸素が活性酸素になってお肌を傷つけるなんてねぇ。
おそら
人体には活性酸素だけを分解する酵素やスカベンジャー(活性酸素中和剤)などが備わっているんですね。だから本来はそんなに心配することはないんですが、活性酸素が多すぎると対処しきれなくなることもあるのでね。(編注:用語集「活性酸素」)
Y菜
じゃあ、そこの足りない部分を化粧品や食べものでサポートできたら、ちょっとは違ってきますよね。
編集者
私たちの体内ではたらく代表的な活性酸素分解酵素は...スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどですね。
N美
あら、そのスーパー何とかってキノコに入ってるわよ。お店で見たことあるもの。それ食べたら少しは体の酵素が増える?
おそら
よくご存じですね~。確かに、アガリクスやヤマブシタケなどはSODを含みます。ただ、そのSODが体内でそのまま酵素として作用するかまでは確かじゃないんですよ。
Y菜
なんだ、残念~。そういえばキノコは日陰に生えるけど、緑の植物って一日中陽に当たってますよね。紫外線は活性酸素を作る原因なのに、大丈夫なのかな。
おそら
植物は体内で抗酸化物質をたくさん作り出せるんですよ。植物由来の抗酸化成分は比較的低分子なので化粧品とも相性がよくて、メーカーとしても重宝してます。
N美
低分子だからいいって...? あ、そうか、お肌に浸透しやすいのね。植物生まれの抗酸化成分って、どんなものがあるの?
おそら
そうですね。ざっくり言うと、カロテノイド、ポリフェノール、植物エキス、抗酸化ビタミン...くらいでしょうか。
●カロテノイド
Y菜
カロテノイドって、お野菜の色の成分...ですよね?
おそら
そう、カロテノイドは色素に分類されます。でも植物だけじゃなくて、動物や微生物などにも含まれますよ。カロテン、キサントフィル、レチノイドなどが代表的ですね。
N美
カロテンっていったら、やっぱりβ-カロテンかしら。緑黄色野菜や焼き海苔とか。レシピ本によく書いてあるわ。
おそら
β-カロテンは紫外線を浴びるとできる活性酸素「一重項酸素」を消す作用があるんですよ。あと、リコピンやアスタキサンチンもカロテノイドです。
Y菜
リコピンは真っ赤なトマトの色ですよね。アスタキサンチンは?
おそら
サケの赤色ですよ。サケはもともと白身魚ですが、アスタキサンチンを含むプランクトンを食べて赤くなるんです。アスタキサンチンは油溶性で皮膚へよく浸透するから化粧品成分としても便利なんですよ。
●ポリフェノール類
編集者
「ポリフェノール」と「フェノール化合物」という呼び方がありますが、このふたつは同じものなんでしょうか?
おそら
まぁ大体においてそうですね。分子構造にフェノール性ヒドロキシ基という部分を複数持っている植物成分はすべてポリフェノールです。ポリフェノール (polyphenol) =たくさんの(poly)フェノール、という意味なので。
Y菜
ブドウやカカオ豆、いろんなものに含まれてますよね。ハーブ関連だったら、ローズマリーやサルビアにも。
おそら
ポリフェノールはほとんどの植物に含まれてますね。主なものには、フラボノイド、フェノール酸、エラグ酸、リグナン、クルクミン、クマリンなどがあります。
N美
フラボノイドはよく耳にするわ。「フラボノイド」っていう特定の物質があるの?
おそら
いえ、クルクミン、クマリン以外は「グループ名」と思ってもらったほうがいいです。フラボノイドにはカテキン、アントシアニン、タンニン、ルチン、イソフラボンなどが含まれます。
編集者
カテキンはお茶やワイン、リンゴ、ブルーベリー、カカオ豆などに多いそうです。いわゆるカカオポリフェノールの大部分もカテキン類らしいですよ。
おそら
タンニンは渋み成分としておなじみですね。お茶や赤ワイン、赤米、バナナや柿などに含まれます。殺菌作用もありますよ。
Y菜
アントシアニンは紫色ですよね。紫イモとかブドウとかブルーベリー、プルーンとか。
N美
黒米の色もアントシアニンよ。黒米入りのご飯ってピンク色でキレイなの! 入れすぎると食欲減退な色になるけど。
編集者
ルチンはおソバの健康成分として昔から有名ですね。水溶性なのでソバのゆで汁に溶けだしてしまう。だから、そば湯を飲む習慣はとても理にかなっているとか。
N美
おソバの美味しいお店はソバ湯も美味しいのよね~。イソフラボンは豆乳品薄騒ぎで覚えたわ。女性ホルモンと似た作用があるってマスコミに出たとたん、見事に店頭から消えたもの。
おそら
ありましたねぇ、そういうの。イソフラボンは大豆のほか葛粉にも含まれてるんですが。
Y菜
あ、葛餅大好きです! きな粉たっぷりかけたらイソフラボン量さらにアップですよね。カテキンとタンニンが多い日本茶や紅茶と一緒に食べたら最強っぽくないですか。
N美
葛餅、コーヒーで食べるのも好きなんだけど...コーヒーにはポリフェノールないの?
おそら
ありますよ。フェノール酸に分類されるクロロゲン酸がコーヒーに多く含まれます。
編集者
それはコーヒー依存な私には非常にありがたい情報です。次、エラグ酸というのはどういう成分でしょうか。
おそら
イチゴに多い成分ですね。美白作用もあります。葛餅にイチゴを添えたらいいかも(笑)
N美
ゴマに含まれるゴマリグナンっていうのがあるじゃない。これって、リグナンの仲間?
おそら
そうですよ。サプリなどにもなっている「セサミン」もゴマリグナンの一種ですね。
N美
じゃあ、葛餅にかけるのはゴマ入りきな粉にしましょうよ。
Y菜
なんだかトッピングがすごいことに(笑)ええと、次は...クルクミン?
おそら
ウコンに含まれる成分です。カレーの黄色ですね。そして最後はクマリン。桜餅独特の甘い香りのもとです。パセリとか桃とか、柑橘類にも含まれます。
編集者
なるほど。では、和風ポリフェノールスイーツは「ゴマきな粉かけ葛餅イチゴ添えと桜餅セット」ということで。飲み物はお茶、コーヒーどちらでも。
●抗酸化作用のある植物エキス
編集者
抗酸化作用があるとされる植物エキスは山ほどあります。ここはぜひ、おそらさんのおすすめを。
おそら
そうですねぇ...まずはハマメリスエキスでしょうか。抗酸化力の高さは実証ずみで、トコフェロールの抗酸化作用を相乗的に高めるという資料もあります。
N美
ハマメリスがどんな風にしてトコフェロールを助けるの?
おそら
酸化防止剤としてはたらいたトコフェロールは、トコフェロールラジカルに変化して抗酸化力を失うんです。ハマメリスエキスはそのトコフェロールラジカルをトコフェロールに戻してくれるんですよ。
Y菜
トコフェロールのリサイクルですね! ハマメリス水はひきしめ化粧水やデオドラントアイテムにも使えるし、ハマメリスって何気にすごいアイテム。(編注:「汗対策のポイントって?」参照)
おそら
そうそう、ヤマブシタケにSODが含まれていることは先ほどお話ししましたが、甘草(カンゾウ)にも似た作用をするものが含まれているんですよ。
N美
あらそうなの。甘草エキスって結構いろんなアイテムに入ってるような感じだわ。美白美容液にも確か...。
おそら
ああ、そうでしょう。甘草に含まれるグラブリジンはメラニン発生にかかわるチロシナーゼの活動を抑えます。だから油溶性の甘草エキスは医薬部外品の美白剤に使えるんですよ。分解しやすいのが玉にきずなんですが。
編集者
甘草エキスに含まれるグリチルリチンも抗酸化と抗炎症作用がありますね。甘草は塩気のきつい土壌でもよく育つ、たくましい植物だそうです。お肌へも力強く効いてくれるといいですねぇ。
おそら
あと、オウゴンエキスもいいですよ。フラボノイドが多くて、活性酸素、とくに過酸化水素除去に効果的。そのほか抗炎症、抗アレルギー、過酸化脂質形成抑制、免疫増強などなど。
N美
すごい万能ぶりね。ガマのアブラみたい(笑)
Y菜
あのね、ユキノシタエキスってどうですか? これも抗酸化力があるらしいんですけど...。
おそら
ああ、ユキノシタエキスいいですねぇ。縮合型タンニンのプロアントシアニジンが含まれていて、過酸化脂質ができるのを抑えてくれますよ。
Y菜
よかった~。実家の庭でね、ユキノシタが増えすぎちゃって。もし抗酸化力が優秀だったらエキス作ろうかなと思ってたんです。
N美
私ね、子供のころヤケドにユキノシタの葉を当ててもらったの覚えてる。そのエキス、きっといろんなものに使えるわよ。
●抗酸化ビタミン類など
Y菜
さっき出てきたトコフェロールって抗酸化ビタミンのビタミンEですよね。レバーとかイワシとかウナギとかに入ってる...イワシの生姜煮、実は私の十八番なんです。
N美
あら、なかなか渋いじゃない。ビタミンEって卵や大豆、あとゴマにも多いのよね。
編集者
ゴマ油の主成分は酸化しやすいリノール酸だそうです。でも、ゴマ油って何となく長持ちするような気がしませんか?
おそら
編集者さん、鋭い。ゴマにはトコフェロールのほか、セサミン、セサモールなど強力な抗酸化成分が含まれているのでゴマ油も酸化が遅いんですよ。
編集者
おお、私の感覚も結構イケてますね(嬉)ところで、トコフェロールと名前が似ているトコトリエノールという成分もありますね。以前お世話になったおそらさんの化粧品サンプルに入ってました。
おそら
あ、トコトリエノールも相当におすすめです。トコフェロールの仲間で、米ヌカなどにごく微量含まれます。抗酸化力はトコフェロールの40~60倍、お肌への浸透力は約15倍とも。油溶性なのも高ポイントです。
Y菜
ちょっとアブラっぽいもののほうが真皮に近いところまで吸収されやすいんですよね。(編注:「化粧水って皮膚から吸収されないの?」参照)
N美
ビタミンCも抗酸化力あったんじゃないかしら。
おそら
そうですね。お肌に塗る分には油溶性の「テトラヘキシルデカン酸アスコルビル」などがおすすめです。リン酸L-アスコルビルマグネシウムやナトリウムなど、水溶性のは誘導体を含めて安定性が今ひとつなので。
Y菜
え、安定性をよくするために誘導体にするんじゃないんですか?
おそら
理屈ではそうなんですが、もともとが壊れやすいものなので...誘導体にしても少しずつ製品中で分解しちゃうみたいです。
N美
じゃあもしかしてそういう成分入りコスメ、買ったときにはビタミンCの効果はほとんどなくなってるってことも...
おそら
ありえますね。分解を抑えたかったらエチドロン酸塩などのキレート剤を入れる、pHをアルカリ側に調整するなどすればいいんですが、いわゆるナチュラルコスメではそれも不可なことが多いでしょうし。
Y菜
水溶性ビタミンCって、そんな扱いの難しい成分だったんだ...。
おそら
でも、食べる分には水溶性ビタミンCは大いにおすすめですよ。外からは油溶性、中からは水溶性ということで。
Y菜
サプリはどうですか? 実は彼氏が最近忙しくて...自炊もなかなかできなくて野菜不足。ビタミン足りてるのかなって。
N美
あらまぁ。そういうのだったらサプリ利用もいいんじゃないの? 彼氏さん、確かタバコも吸うのよね。
おそら
あー、喫煙する人はビタミンCをできるだけ積極的に摂ったほうがいいですよ。タバコ1本で体内には大量の活性酸素ができるし、ビタミンCは25~100mgも失われるので。
Y菜
具体的な数字で聞くと説得力が(汗)本当はタバコ止めてもらいたいんですけど...とりあえずはサプリすすめてみます。
編集者
タバコといえば。抗酸化物質のひとつユビキノンは少し前までタバコの葉から抽出して合成されていたそうです。ユビキノンもビタミンに近い物質らしいですね。
おそら
そうなんですよ。ユビキノンも油溶性でお肌にもよく浸透しますね。あともうひとつ、γ-オリザノールもおすすめ。コメ油に含まれる油溶性の抗酸化成分です。
N美
ゴマやコメ油や大豆...日本人になじみ深い食べものにたくさん抗酸化成分が入ってるってなんだか嬉しいわ。
編集者
これらのおすすめ成分を上手に利用するコツみたいなものはあるんでしょうか。
Y菜
化粧品だったら、やっぱり全成分表示? 表示順で前のほうに書いてあるものほど配合量が多いから、それを目安にすれば抗酸化成分の多いものを選べそう。
おそら
そうですね。ただ、全成分表示では1%以下の配合成分は「順不同」なんです。表示のうちどこからが1%以下なのか分からないのでその点気をつけてください。
N美
あら、そうなの。抗酸化成分って、大体何%くらい入っているものなの?
おそら
うーん、植物エキスだと1~3%くらいでしょうか。こういう成分は多すぎてもお肌に刺激になることがあるんですよね。
Y菜
じゃあ、配合されてる分はしっかりお肌に吸収させなくちゃ。化粧水だったら、ローションパックするとか。朝は忙しいから、夜にじっくり。(編注:「化粧水って皮膚から吸収されないの?」参照)
おそら
トコフェロールはビタミンCやユビキノンと一緒に使ったり食べたりするといいですよ。活性酸素除去のとき、おたがいに協力しあって効果がアップします。
編集者
なるほど。サプリメントなどでも一緒に飲むと良さそうですね。サプリの利用については、なにかありますか。
おそら
そうですねぇ...「頼りすぎない」でしょうか。特定の成分だけを大量摂取すると体を傷めることがあるので。
N美
ビタミンE摂りすぎると骨粗鬆症に悪影響っていうニュースもあったしね...やっぱり基本はきちんと寝て食べてっていうことかしら。体調がよければ体内の活性酸素分解酵素なんかもよくはたらけるだろうし。(編注:Check Point「ビタミン類の摂取上限など」参照)
Y菜
そうですね...完璧にはムリですけど、でも、できるだけは。そうだ、今度みんなで抗酸化お食事会しませんか? ビタミンEたっぷりのイワシ生姜煮、ご馳走しちゃいます!
N美
あらそれステキ。じゃ私はポリフェノールスイーツの葛餅と桜餅、それにエラグ酸入り新鮮イチゴを用意するわ。
おそら
いいですね~、私はフラボノイド&フェノール酸入りとっておき緑茶とコーヒー、ワインを持っていきます。
編集者
私はアントシアニンやカロテノイド豊かなこだわり黒米と緑黄色野菜お持ちしましょう。ではさっそく日程調整をば。皆さま、今日はこの辺で!
(2012年7月初出)
●カロテノイド | ||
---|---|---|
カロテン(α-カロテン、β-カロテン、リコピンなど) | キサントフィル(ルテイン、アスタキサンチン、カプサンチン、β-クリプトキサンチンなど) | レチノイド(ビタミンA) |
●ポリフェノール | ||
エラグ酸 | クマリン | クルクミン |
フェノール酸(クロロゲン酸など) | フラボノイド(カテキン、アントシアニン、タンニン、ルチン、イソフラボンなど) | リグナン(ゴマリグナンなど) |
●植物エキス | ||
アルニカエキス | イチョウ葉エキス | オウゴンエキス |
オウレンエキス | オオバナサルスベリエキス | オトギリソウエキス |
甘草エキス(化粧品原料としては油溶性甘草エキス) | ゲンノショウコエキス | コウキエキス |
ゴマ油 | サルビアエキス(セージエキス) | シナノキエキス |
シャクヤクエキス | スイカズラエキス | ダイオウエキス |
茶エキス | チョウジエキス | ノイバラエキス(エイジツエキス) |
ハマメリスタンニン(ハマメリスエキス) | ビワ葉エキス | ブドウ種子エキス |
ヘイフラワーエキス | 松樹皮抽出物(ピクノジェール) | マリアアザミエキス |
メリッサエキス | ユーカリエキス | ユキノシタエキス |
ヨモギエキス | リンゴエキス | ローズマリーエキス(マンネンロウエキス) |
ローマカミツレエキス | - | - |
●抗酸化ビタミン | ||
L-アスコルビン酸(ビタミンC) | トコフェロール(ビタミンE) | トコトリエノール(トコフェロールの一種) |
●その他 | ||
エストロゲン(女性ホルモン) | γ-オリザノール | グルタチオン |
酵母抽出物 | 植物抽出SODエキス | 乳酸菌培養液 |
ビフィズス菌代謝物 | ユビキノン(ビタミン様物質) | ラクトフェリン |