20代半ばOL。乾燥肌。冷え症なのが悩み。
40代後半主婦。テニスが趣味。肌のくすみが気になる。
30代前半フリーランス。しみ、大人ニキビが悩み。
Y菜
これまでも色々と出てきましたけど、心の状態とお肌ってホントに関係が深いんですね~。お肌のためにと思ってアレはダメ! これは毒! なんて厳しくやってたら今度はそれが肌荒れの元になっちゃったり...
おそら
そうなんですよ。お肌の働きを調節している自律神経系、内分泌系、免疫系はストレスに本当に影響されやすいです。精神的・肉体的どちらのストレスでも、同じですね。
編集者
具体的には、ストレスはどのように私たちの体に作用するのでしょうか?
おそら
まず、脳がストレスを受けますよね。すると副腎皮質からグルココルチコイド(糖質コルチコイド)がたくさん分泌されるんですが...(注1)
N美
え、グル?...グルコ...コイド? 長すぎて分からない(汗)
おそら
あ、すみません。ホルモン類の名前は長ったらしいものが多くて(苦笑) つまり、副腎皮質ホルモンのひとつですね。それが体の中で増えると、たとえば免疫を司るランゲルハンス細胞の数が減ったり形が変わったり、体に入り込んだ異物の情報をリンパ球に伝える力が低下したりするんです。
編集者
ランゲルハンス細胞を変形させて数も減らす... そんな直接的な影響があるのですか! ストレス恐るべし。
おそら
それでね、これが分かったのは1993年のことなんです。
N美
あら、それってうちの高校一年の娘が産まれた年じゃない。そんなに昔のことじゃないわ。
おそら
でしょう? それまでは、精神的ストレスが免疫に関係するなんて誰も思っていなくて。痛みとか熱さとかのストレス情報を伝える神経伝達物質にCGRPというのがあるんですが、これがランゲルハンス細胞と接していて、お互いに影響を与え合っているんですよ。(注2)
N美
そうだったの。じゃ、こういうことが分かってない時代にストレスで体調を崩した人って大変だったわね。周りの理解が得られなくて。
Y菜
そういえば、ウチの祖父も「風邪を引くのは根性が足らんからだ」なんて言いますよ、理系の学校出てるのに。今度実家に帰ったらちゃんと言っとかなくちゃ。どんな種類にせよストレスが溜まると体の免疫力が下がるって。祖父自身も「近頃の若いもんは!」ってしょっちゅうストレス溜めてるみたいだし。
編集者
可愛い孫がそうやってコミュニケーションを取ってくれたら、おじいさまのストレスもきっと減りますよ(笑) ところで、ストレスを感じると分泌される副腎皮質ホルモン、グルココルチコイドは結局何のために分泌されるのでしょう?
おそら
それはやはり、体を守るためですね。生体防御反応です。
Y菜
え、ランゲルハンス細胞を減らして免疫を低下させるのが「体を守る」って... それ、ヘンじゃないですか?
おそら
普通そう思いますよねぇ。でも副腎皮質ホルモンが分泌される本来の目的のひとつは、ストレスによって起こる炎症やアレルギーなどの皮膚症状を和らげることなんですよ。ランゲルハンス細胞へのダメージは副次的なものです。
N美
ああ、それなら納得かも。基本的に体のためにはなるんだけど、副作用も出てしまう...ってことね。
おそら
その通りです(^^)
編集者
ランゲルハンス細胞にダメージを与えるほかに、副腎皮質ホルモンにはどんなデメリットがあるんでしょう?
おそら
そうですね~。皮脂の分泌を盛んにしてニキビをできやすくしたり、表皮ケラチノサイトの増殖を抑えてターンオーバーを遅らせたりするので表皮が薄くなったりします。
Y菜
そういえばニキビのところで出てきたコルチゾールも副腎皮質ホルモンでしたよね。ニキビにも、ターンオーバーにも悪い... じゃ、もしかしてシミにも影響があるとか?
おそら
残念ながら... 当たりです。副腎皮質ホルモンはメラニン色素の生成を促す作用があるのでシミを悪化させると言われてます。
Y菜
うわ、宝くじは当たらないのに、こういうのだけは当たるんだ~。
おそら
もうひとつおまけに... メラニン色素を作り出すメラノサイト刺激ホルモン(MSH)は脳下垂体から出るんですが、これもストレスで分泌が増えちゃいます...
N美
勘弁してって感じよね(笑) いつもイライラカリカリしているとニキビは増えるしシミは濃くなるし、お肌は薄くなって免疫は落ちる... ホントいいことなしなのねぇ。
編集者
髪の毛なんかはどうでしょう? 強烈なストレスにさらされると一晩で頭が真っ白に... という話がありますよね。フランス革命時の王妃マリーアントワネットも、国外逃亡失敗のショックで総白髪になったとか。
Y菜
あ、それマンガで読みました! ホントにそんなこと、あるんですか?
おそら
うーん... 一晩で総白髪っていうのは、やはり大げさだと思います。ストレスは毛根周囲の血行を悪くしますから、白髪に「なりやすくなる」のは確かですけどね。
N美
...? Y菜さんさっきからあちこち痒そうだけど、大丈夫?
Y菜
あ、すみません(汗) ちょっと最近忙しくて寝不足で... こんなときって決まって手足が痒くなっちゃうんです。
おそら
それもストレス性のものかも知れませんよ。ごくごく軽いじんま疹のような感じ。
編集者
ストレスでじんま疹が出るんですか?
おそら
出ることもありますよ。表皮の上の方には神経線維が伸びてきてるんですけど、その末端からは化学伝達物質が放出されてるんです。で、ストレスのせいでそれが過剰になると血管が拡張してタンパク質が漏れたり、むくみが出たり... いわゆる「じんま疹」の症状になるんです。
Y菜
そうなんですか... 寝てる間もバリバリ掻くからかなぁ、なんかいつもより粉吹きもひどくて(泣) きちんと保湿はしてるんですけど。
N美
Y菜さん、もともと乾燥肌だものねぇ。
おそら
ストレスが乾燥に拍車をかけている可能性もありますね。ストレスでお肌のバリア機能が下がって角質層から水分が逃げやすくなってしまう、そうなるとますますバリアが弱くなるから... 普段なら何とも感じない刺激を痒みとして認識してしまっているのかも。
Y菜
そっかぁ... いくらおそらさんに教わった正しいお手入れしてても、体の内側からストレス攻撃を受けていたら... ダメダメですね...
編集者
体や心の調子に気を配ることも、保湿や紫外線防御と同じくらいお肌にとって大事なことなんですね。
Y菜
実は、寝不足の原因は資格試験の勉強なんです。初めて受けるから不安で不安で...
N美
大丈夫よ、最初はみんな初めてなんだから。1回で受からなくっても次があるわけだし。それにほら、そんな時こそY菜さん得意のメイクの出番じゃない? メイクがうまくいった日って、それだけで機嫌よく過ごせたりするわよ。
Y菜
確かにそうですね~。そんな日って仕事までスムーズに進むような気が(笑) メイクで自分の弱いところが補えるような気がするからかなぁ。
おそら
そう、化粧品がもたらす最大のメリットはそれだと思います。化粧品ってどんなに品質が高くても「自己の一部」ではない... つまり体にとって一種の異物なわけで。そういうものと長時間接すると、お肌にはやはりある程度の負担はかかってしまうんです。でも、そのおかげで自分に自信が持てたり、心が潤ってストレスが減ったりすれば、トータルでプラスの効果が得られるということなんですよね。
Y菜
マッサージの優しい手の感触とか、好きなコスメの香りでリラックス、ってこともありますよね。今、天然のバラ水を保湿に使ってるんですけど、それがもうほんっとにイイ香り! 無意識に何度も深呼吸するから、それも体のためになってるのかな?
編集者
老人介護施設で働く友人から聞いた話ですが。認知症のご婦人にメイクアップをしてあげると、それだけで症状が改善することもあるそうですよ。いつもは無表情な人が笑顔を見せてくれたりとか。美容福祉士、美容セラピーという言葉も生まれているんだそうです。
おそら
嬉しいお話ですね。化粧品は、医薬品のように劇的な効果効能を体にもたらすためのものではないんですね。でも、医薬品とはまた違った側面から人々を支えて効果を上げる... そういうことは確かにあると思います。
Y菜
でも~心の状態がここまで体に影響を与えるって分かってきたんだし。基礎化粧でお肌を磨いて、メイクでキレイになって、それが体の機能アップにつながる。そんなコスメのチカラをもっと広く認めてもらいたいな。
N美
そうねぇ。ウチの夫なんか、私がこのあいだ新しい口紅つけたら「前の方が良かった」とかボソッと言うだけ。新色の口紅が女性の心と体にどんなに良い影響を及ぼすか、まるで分かってないわよね。ホント無神経なんだから!
Y菜
え~そうかなぁ。メイクの色に気付いてくれるなんて、ステキな旦那さまですよ?
おそら
私もそう思います(^^) 前のほうが良かったというのは、前の口紅がN美さんに似合っていたことを覚えていらしたからこそ出てきた言葉ですよね。
N美
え... あら... いやだ、そんな風に考えたことなんてなかったわ。ホントにそうかしら?
Y菜
なぁんだ、プンスカしてるようで結局はラブラブなんじゃないですか(笑)
編集者
メイクが取り持つ夫婦の仲、これも立派な「効果効能」ですね。しかし、これ以上N美さんご夫妻のアツアツぶりを聞かされては独身組はたまりません~。よって、本日はこれにて解散!
(注1)脳がストレスを受けると、脳下垂体前葉から副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が分泌される。ACTHは血液に乗って副腎皮質へ到達し、それにより副腎皮質ホルモンのグルココルチコイド(糖質コルチコイド)が分泌される。
(注2)ネズミなどの実験によると、ランゲルハンス細胞に伝わるストレスには精神的・肉体的そして感覚的 (痛い、冷たい、熱い等)の3つがあり、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)によってランゲルハンス細胞の抗原提示能力は低下する、つまり免疫力が下がる... ということが分かった。
(2009年2月初出)