20代半ばOL。乾燥肌。冷え症なのが悩み。
40代後半主婦。テニスが趣味。肌のくすみが気になる。
30代前半フリーランス。しみ、大人ニキビが悩み。
N美
お肌のうるおいがこんなに優秀な、そして繊細な仕組みで守られていたなんて。スポンジが湿ってるのとは訳が違うのねぇ。
おそら
そうですね。水分、NMF、脂質(角層細胞間脂質、皮脂膜)、この3つの「モイスチャーバランス」が整ってはじめて、お肌は様々な環境に負けないうるおいをキープできるんです。基礎化粧品も、このバランスを基本に考えられたものが多いですね。
編集者
お肌に合った製品選びも大切ですよね。そのためには、自分の肌が乾燥・脂性・普通のどれに当たるかをよく理解していないと。
おそら
そう、その肌質なんですが。実は皮脂の量だけに頼った3分類法はもう古いんですよ。今は角質の水分量にも注目して、4つ目の「乾燥型脂性」がプラスされてます。(編注:各肌質の詳細はcheckpointで)。
Y菜
乾燥型脂性... カサカサ肌荒れしやすいのに、脂っぽくてニキビが出るんですか?
おそら
そうです。実は私の肌がそれ(苦笑) 皮脂分泌は活発なのに、角質層の水分は適正量(10~20%)以下。最近の20~30代に増えていると言われています。
編集者
おそらさんのお肌、そんな風には全く見えませんよ! やはり専門知識があるからお手入れが本格的なんですね。
おそら
あ、ありがとうございます。でも私は結構ナマケモノで(笑) そんなに完璧なお手入れはしてませんよ。スキンケアはあくまでもお肌の機能をフォローするものなので「適度」でいいんです。やり過ぎは逆効果なことも多いですから。
Y菜
私は乾燥肌なんですけど、まさにそんな感じです~。手入れ不足もダメだけど、ちょっと余計なことすると途端にかぶれちゃったり。刺激にすごく敏感なんですよね。
おそら
水分・皮脂が不足気味だとそんな風になりやすいです。Y菜さんみたいな乾燥肌は洗顔で皮脂を落としすぎないのを一番に気をつけるといいですね。そして洗顔後は水分をたっぷり補って油分でフタを忘れないことです。
Y菜
皮脂を落としすぎない...というとクレイや糠なんかで洗うといいかな?(編注:「理想的なターンオーバーのために出来ること」の「肌が過敏になっている人」のお手入れを参照)
おそら
その通りですね。石鹸ならオレイン酸たっぷりのオリーブオイル石鹸もおすすめ。
Y菜
なるほど...メモメモ。
N美
私は脂性肌だから、すぐに毛穴に皮脂が詰まるんですよ。でも、何回も洗うと細胞間脂質までなくなりそう。皮脂限定で落としてくれるような洗顔料、ないかしらねぇ...
おそら
そういう「傾向の」石鹸ならありますよ。昔ながらの牛脂やパーム油主体の製品がそうです。
N美
あら、そうなの?! 牛脂もパーム油も洗浄力が強そうなのに、意外だわ~。
おそら
洗浄剤の原料には、「選択洗浄性」といって、得意な汚れとそうでない汚れがあるものも多いんです。牛脂やパーム油にはステアリン酸やパルミチン酸という脂肪酸が多く含まれますが、これらの成分は細胞間脂質よりも、皮脂をよく落としてくれるんですよ。
編集者
それは素晴らしい。ごくありふれた牛脂・パーム油の石鹸にそんな力があるとは知りませんでした。
おそら
これがヤシ油やパーム核油だと、ラウリン酸・ミリスチン酸が多くて、これらは皮脂と細胞間脂質の両方を落とします。
N美
どうせなら牛脂やパーム油「主体」じゃなくて「100%」の石鹸が欲しいわねぇ。そういうのはないかしら?
おそら
それが、そうもいかない問題があって。ステアリン酸やパルミチン酸だけだと、洗顔に適したぬるま湯程度の温度では充分に溶けないんです。溶けないと洗浄力が出ませんから、普通は他の油脂を混ぜて溶けやすくするんですね。牛脂・パーム油が7~8割、残りがヤシかパーム核油というのが昔からベストとされている配合率。それは、最新の美容科学から見ても大いに納得なんですよ。(編注:パーム油100%の石けんも実はあります。詳しくはCheck Pointで。)
編集者
面白いですね。では、皮脂よりも細胞間脂質をよく落とす脂肪酸もあるのでしょうか?
おそら
オリーブ油に多いオレイン酸は、細胞間脂質の成分をよく落とす傾向にあります。実は牛脂やパーム油にもこの脂肪酸は多いんですが、ステアリン酸やパルミチン酸の量も負けてないので、結果的に皮脂の方をよく落とす石鹸に仕上がるんです。
Y菜
あれ、さっきオリーブオイル石鹸は私向きって... 細胞間脂質を落としやすい石鹸を乾燥肌が使って大丈夫なんですか。
おそら
オレイン酸主体の石鹸は、皮脂の主成分であるスクワレンを落とす力が弱いんです。特にオリーブオイルは皮脂に強いステアリン酸・パルミチン酸が非常に少ないから余計にね。
Y菜
それは皮脂が足りない乾燥肌にとってはメリットですけど... あ、そうか! 2度洗いを避けて皮脂を落としすぎないようにすればいいんだ。それなら細胞間脂質もそんなに落ちないですよね。
おそら
そうなんです。洗顔のコツがわかってきましたね(^-^)
N美
ところで、脂性肌のお手入れで、皮脂を取るほかに気をつけるポイントってあります?
おそら
毛穴をひきしめる収れん成分入りアイテムを意識して選ぶといいですよ。水分補給と皮脂コントロールが同時にできます。お肌の様子によっては、適度に油分も補ってください。定期的な毛穴パックもおすすめ。
N美
その油分、やっぱりこってり系はダメですよね? クリームより乳液とかさっぱり系オイルとかのほうが...
おそら
それはお好みでOKです。どの肌質にも言えることですけど、要は、自分の肌にストレスなく使えるモノが一番ですよ。
Y菜
あの、細胞間脂質の成分「セラミド」配合アイテムがありますよね。価格帯、ちょっと上がりますけど。やっぱりそういうのを使った方が効果的ですか?
おそら
悪くはないですけど。ただ、外から補うセラミドは自分のとは種類もバランスも違うし... それより自前のセラミドを増やす環境―充分にうるおった肌―を整える方が長い目で見たら「効果的」だと思いますよ。
Y菜
そうなんだ... こないだお店で見たの、ムリして買わなくて良かった~(笑) それと、気になるのが化粧水のつけ方なんです。コットン、スプレー、手、どれがベストなのか。色んな意見があって迷っちゃって...。
おそら
ていねいに付ける、トラブル時にはこすったり叩いたりしない、この2点を守れば、どの方法でも大丈夫。
編集者
皆さん結構ご苦労なさっているようで... 私、ほとんどトラブルなしの普通肌です。何だか申し訳ない。
おそら
いいことじゃないですか。ちゃんと肌に合ったお手入れができているみたいですし。でも、油断はしないでくださいね。悩みの大人ニキビが出るときって、生活が乱れてないですか?
編集者
ご名答です(苦笑) 締めきりが近くなると徹夜続きで、食事も不規則になって... いい肌質なのにもったいないことですよね。
N美
どの肌質でも気を付けた方が良いことって、なんでしょう?
おそら
まず、ターンオーバーが滞らないように血行を良くすること。お風呂、運動などは適度に行えばどの肌質の方にも効果的です。お肌の調子が良ければマッサージやパックもいいでしょう。
編集者
エアコン冷暖房などの低湿度環境にも注意が要りそうですね。私、冬は仕事机の上に小型の加湿器が欠かせないんですよ。
Y菜
あ、私も! 乾燥肌と冷え性にとって冬は魔の季節。だからお風呂でアロママッサージ続けてます~。バスソルト入れたお湯で半身浴も。
おそら
低湿度や冷え対策はお肌だけではなく体全体のためにもなりますね。あと大事なのは、自分は○○肌だから、と思いこまないこと。生活習慣やまわりの環境が変われば肌の状態も変わるんです。毎日鏡を見るとき、ほんの少し意識してお肌を「観察」してあげてください。
N美
お肌の観察日記なんていいかもね。でも、第4の肌質が発見されたり、石鹸のお肌に対する作用が脂肪酸の種類によって違ったり...
Y菜
思いこみを捨ててお肌を観察とか、スキンケアも化学ですよね。学校の授業もこんなだったら、もっとがんばれたのに~(笑)
編集者
理系は追試の常連だった私も全く同感です(~_~;) でも誤った思いこみがこうして覆されるのは、何だか気持ちいいですね。では今日はこの辺で。
(2008年10月初出)
◎お肌がうるおうには水分、NMF、脂質(角層細胞間脂質、皮脂膜)の「モイスチャーバランス」が大事。自分の肌質をよく知り、理想のモイスチャーバランスに近づくには何を補ったらよいのかをよく見きわめよう。
◎冷えや低湿度環境はターンオーバー乱れの一因。入浴や運動などを適度に行ってターンオーバーをサポートしよう。トラブルがないときにはマッサージやパックも良いけど、お肌の調子が今ひとつのときはガマンして。
◎肌質は季節や環境、生活習慣によっても変わる。私はこの肌質! と思いこまず、日頃から自分の肌を客観的に観察する心がけを。
角質層の水分量と皮脂分泌量がちょうどよく、トラブルは少ない。肌のキメが細かく弾力性もある。肌表面のpHは弱酸性。 トラブルが出たら、生活習慣や食事が乱れていないかまずチェックしてみよう。
今のお手入れが肌に合っている。現状維持を。
牛脂やパーム油主体の石鹸で。泡立てネットなどで充分に泡立ててから洗う。
角質層の水分、皮脂分泌ともに少ない。肌のキメは細かく、毛穴も小さく目立たない。肌は柔軟性やツヤが少なく、かさつきがち。化粧ノリは今ひとつ。肌表面のpHはアルカリ性寄りで刺激に敏感。かぶれなどの炎症を起こしやすい。
油分も水分も不足。両方をたっぷりと補うお手入れを。乾燥は細胞間脂質の流出の一因。できるだけ乾燥を防いで規則正しいターンオーバーが行われるように。
洗いすぎは厳禁。皮脂をあまり取らないオリーブ油主体の石けんでやさしく洗う(ただし2度洗いはNG)。牛脂やパーム油主体の石鹸でさっと洗うのもオススメ。どんな石鹸にしろ、充分に泡立ててから洗うこと。クレイやぬか袋など、よりマイルドな洗浄剤(※)を使うことも考えて。
※ 詳しくは『理想的なターンオーバーのために出来ること…って?』の「肌が過敏になっている人」のお手入れ参照。
保湿効果の高い化粧水や美容液で水分をたっぷり補給。不足している皮脂膜の代わりに乳液やクリームなどで肌にフタをして水分を閉じこめる。保湿成分はコラーゲンやヒアルロン酸などの高分子系でも、グリセリンでも。とにかく自分にとって低刺激で心地よいものをチョイス。
おすすめアイテム:化粧水(ドライスキン/乾燥肌向け、しっとりタイプなど)。保湿成分名(グリセリン、ヒアルロン酸、コラーゲン、ベタイン など)と「化粧水」の複数キーワードで検索するのもオススメ。
角質層の水分量は正常だが、皮脂分泌が多すぎる。顔全体が脂っぽくてテカりやすく、化粧崩れしやすい。肌(皮膚)が肥大して厚ぼったい感じ。キメは粗く、毛穴は大きめ。特に鼻から額(Tゾーン)の毛穴が目立つ。肌表面のpHは酸性寄り。ニキビや吹き出物も出やすい。
過剰な皮脂を取り除き、肌を清潔に保つお手入れを。
洗浄力の高い洗顔料や石けんでていねいに洗顔。泡立てネットなどで充分に泡立ててから洗うこと。
おすすめアイテム:浴用オリブ、Mマーク 無添加せっけん、サボン・ド・マルセイユ パームなど。その他「牛脂」「パーム油」等のキーワードで検索。
毛穴をひきしめる収れん効果のある化粧水でお肌を整えつつ保湿。肌の様子を見て必要なときだけ油分も補う。アイテムはお好みで。パックなどで定期的に毛穴掃除をするのもオススメ。
おすすめアイテム:●化粧水/オーブリー ナチュラルハーブ フェイシャルアストリンジェント、LOGONA(ロゴナ) ミント・ハーバルトナー、肌にやわらか 薬用柔軟水など。その他「ハマメリス」「収れん」「引き締め」等のキーワードで検索。●パック/パック&マスク、クレイ・粘土
皮脂分泌は活発で、乾燥もしやすい。カサカサして肌荒れしやすいのに、ニキビや吹き出物も出やすい。肌のキメは乱れがち。20~30代に多く、増える傾向にあり。肌表面のpHは弱酸性~酸性。
過剰な皮脂を取り除き、不足している水分は充分に補う。
洗顔料や石鹸は牛脂やパーム油主体のものでしっかり洗う。泡立てネットなどで充分に泡立てるのを忘れずに。
おすすめアイテム:脂性肌と同じ
保湿効果が高く、収れん作用もある化粧水でお肌を整える。美容液でたっぷり保湿するのもGood。カサつくようならオイルや乳液、クリームなど好みのアイテムで油分を補給。Tゾーンはオイリー、Uゾーンはカサカサというタイプはちょっと面倒だけどエリア別にお手入れを。Tゾーンに収れん化粧水、Uゾーンに保湿重視の化粧水や美容液。必要なら油分も補って。
おすすめアイテム:●化粧水/オーブリー シーバクソン フェイシャルトナー、オーブリー ブルーグリーンアルゲ フェイシャルトナー、肌にやわらか 薬用柔軟水、アンナトゥモール ピュアローション、肌をうるおす 保湿浸透水など。その他「ハマメリス」「収れん」「引き締め」等のキーワードで検索。●美容液/美容液・ジェル
太陽油脂から発売されている「ナチュロン
ソープ」は「高級脂肪酸のみで、低刺激」を目指して作られた、パーム油100%の特殊な石鹸です。使用する場合は、40℃くらいの少し熱めの湯でしっかり泡立ててから肌に乗せてください。洗い流すときはぬるま湯で。
※製造終了・完売のため、石けん百貨での販売は終了いたしました。
そのほか、浴用オリブ、Mマーク 無添加せっけんなど、牛脂・パーム油の配合量が多い優れた石けんは沢山あります。「牛脂」「パーム油」等のキーワードで探してみてください。