ある分子の中でプラスに帯電した水素原子(H)が、他の分子のマイナスに帯電した原子と引き合ってできた結合のこと。強いマイナスの電気を帯びた原子(注1)と水素が結合すると、ひとつの分子の中でも水素の部分はプラスに、もうひとつの原子の部分はマイナスに帯電する。プラスの電気を持つ水素は、近くにあるほかの原子や分子の孤立電子対(注2)と、静電気の引力によって結びつく。水素結合は比較的簡単に切れたりつながったりする弱い結合だが、生き物の体内にあるタンパク質構造の中では重要な役割を果たしていることが多い。
注1:このような原子のことを「電気陰性度の大きい原子」と呼ぶ。酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)、塩素(Cl)などが代表的な例。
注2:孤立電子対/非共有電子対――複数の原子がお互いの電子を共有することによって安定し、1つの分子になることを共有結合という。だが、結合後の分子には共有されていない電子も存在し、そのような電子をペアにして孤立電子対と呼ぶ。電子はもともとマイナスに帯電しているので、プラスの電気を持つ水素イオンを引き寄せる性質がある。