コールタールの副産物からできます
タール色素(有機合成色素)
タール色素とは、石油からコールタールを作るときにできる芳香族化合物(注1)を原料に合成される色素のことです。染料、レーキ、有機顔料の3種類に大きく分けられます。タール色素すべてが化粧品に使えるわけではなく、医薬品及び医薬部外品用、化粧品用として使用が許可された「法定色素」に当たる色素のみが、以下のように区分された上で配合されています。
タール色素の表示名称(化粧品の全成分表示における名称)は、「○色▲号」から「色」「号」を抜いた「○▲」という形になります。(例:赤色2号 → 赤2)
- 全ての医薬品、医薬部外品及び化粧品に使用できるもの(11種)
- 赤色2 号(別名アマランス(Amaranth))
- 赤色3 号(別名エリスロシン(Erythrosine))
- 赤色102 号(別名ニューコクシン(New Coccine))
- 赤色104 号の(1)(別名フロキシンB(Phloxine B))
- 赤色105 号の(1)(別名ローズベンガル(Rose Bengal))
- 赤色106 号(別名アシッドレッド(Acid Red))
- 黄色4 号(別名タートラジン(Tartrazine))
- 黄色5 号(別名サンセットイエローFCF(Sunset Yellow FCF))
- 緑色3 号(別名ファストグリーンFCF(Fast Green FCF))
- 青色1 号(別名ブリリアントブルーFCF(Brilliant Blue FCF))
- 青色2 号(別名インジゴカルミン(Indigo Carmine))
- 外用医薬品、医薬部外品及び化粧品に使用できるもの(47種)
- 赤色201 号(別名リソールルビンB(Lithol Rubine B))
- 赤色202 号(別名リソールルビンBCA(Lithol Rubine BCA))
- 赤色203 号(別名レーキレッドC(Lake Red C))
- 赤色204 号(別名レーキレッドCBA(Lake Red CBA))
- 赤色205 号(別名リソールレッド(Lithol Red))
- 赤色206 号(別名リソールレッドCA(Lithol Red CA))
- 赤色207 号(別名リソールレッドBA(Lithol Red BA))
- 赤色208 号(別名リソールレッドSR(Lithol Red SR))
- 赤色213 号(別名ローダミンB(Rhodamine B))
- 赤色214 号(別名ローダミンB アセテート(Rhodamine B Acetate))
- 赤色215 号(別名ローダミンB ステアレート(Rhodamine B Stearate))
- 赤色218 号(別名テトラクロロテトラブロモフルオレセイン(Tetrachlorotetrabromofluorescein))
- 赤色219 号(別名ブリリアントレーキレッドR(Brilliant Lake Red R))
- 赤色220 号(別名ディープマルーン(Deep Maroon))
- 赤色221 号(別名トルイジンレッド(Toluidine Red))
- 赤色223 号(別名テトラブロモフルオレセイン(Tetrabromofluorescein))
- 赤色225 号(別名スダンⅢ(Sudan Ⅲ))
- 赤色226 号(別名ヘリンドンピンクCN(Helindone Pink CN))
- 赤色227 号(別名ファストアシッドマゲンタ(Fast Acid Magenta))
- 赤色228 号(別名パーマトンレッド(Permaton Red))
- 赤色230 号の(1)(別名エオシンYS(Eosine YS))
- 赤色230 号の(2)(別名エオシンYSK(Eosine YSK))
- 赤色231 号(別名フロキシンBK(Phloxine BK))
- 赤色232 号(別名ローズベンガルK(Rose Bengal K))
- だいだい色201 号(別名ジブロモフルオレセイン(Dibromofluorescein))
- だいだい色203 号(別名パーマネントオレンジ(Permanent Orange))
- だいだい色204 号(別名ベンチジンオレンジG(Benzidine Orange G))
- だいだい色205 号(別名オレンジⅡ(Orange Ⅱ))
- だいだい色206 号(別名ジヨードフルオレセイン(Diiodofluorescein))
- だいだい色207 号(別名エリスロシン黄NA(Erythrosine Yellowish NA))
- 黄色201 号(別名フルオレセイン(Fluorescein))
- 黄色202 号の(1)(別名ウラニン(Uranine))
- 黄色202 号の(2)(別名ウラニンK(Uranine K))
- 黄色203 号(別名キノリンイエローWS(Quinoline Yellow WS))
- 黄色204 号(別名キノリンイエローSS(Quinoline Yellow SS))
- 黄色205 号(別名ベンチジンイエローG(Benzidine Yellow G))
- 緑色201 号(別名アリザリンシアニングリーンF(Alizarine Cyanine Green F))
- 緑色202 号(別名キニザリングリーンSS(Quinizarine Green SS))
- 緑色204 号(別名ピラニンコンク(Pyranine Conc))
- 緑色205 号(別名ライトグリーンSF 黄(Light Green SF Yellowish))
- 青色201 号(別名インジゴ(Indigo))
- 青色202 号(別名パテントブルーNA(Patent Blue NA))
- 青色203 号(別名パテントブルーCA(Patent Blue CA))
- 青色204 号(別名カルバンスレンブルー(Carbanthrene Blue))
- 青色205 号(別名アルファズリンFG(Alphazurine FG))
- 褐色201 号(別名レゾルシンブラウン(Resorcin Brown))
- 紫色201 号(別名アリズリンパープルSS(Alizurine Purple SS))
- 粘膜以外に使用される外用医薬品、医薬部外品及び化粧品に使用できるもの(25種)
- 赤色401 号(別名ビオラミンR(Violamine R))
- 赤色404 号(別名ブリリアントファストスカーレット(Brilliant Fast Scarlet))
- 赤色405 号(別名パーマネントレッドF5R(Permanent Red F5R))
- 赤色501 号(別名スカーレットレッドNF(Scarlet Red NF))
- 赤色502 号(別名ポンソー3R(Ponceau 3R))
- 赤色503 号(別名ポンソーR(Ponceau R))
- 赤色504 号(別名ポンソーSX(Ponceau SX))
- 赤色505 号(別名オイルレッドXO(Oil Red XO))
- 赤色506 号(別名ファストレッドS(Fast Red S))
- だいだい色401 号(別名ハンサオレンジ(Hanza Orange))
- だいだい色402 号(別名オレンジI(Orange I))
- だいだい色403 号(別名オレンジSS(Orange SS))
- 黄色401 号(別名ハンサイエロー(Hanza Yellow))
- 黄色402 号(別名ポーライエロー5G(Polar Yellow 5G))
- 黄色403 号の(1)(別名ナフトールイエローS(Naphthol Yellow S))
- 黄色404 号(別名イエローAB(Yellow AB))
- 黄色405 号(別名イエローOB(Yellow OB))
- 黄色406 号(別名メタニルイエロー(Metanil Yellow))
- 黄色407 号(別名ファストライトイエロー3G(Fast Light Yellow 3G))
- 緑色401 号(別名ナフトールグリーンB(Naphthol Green B))
- 緑色402 号(別名ギネアグリーンB(Guinea Green B))
- 青色403 号(別名スダンブルーB(Sudan Blue B))
- 青色404 号(別名フタロシアニンブルー(Phthalocyanine Blue))
- 紫色401 号(別名アリズロールパープル(Alizurol Purple))
- 黒色401 号(別名ナフトールブルーブラック(Naphthol Blue Black))
「粘膜に使用する化粧品」として定められているのは口紅とアイライナーです。これらには区分Ⅲのタール色素は使えません。ただし、口紅とアイライナー以外の製品でも安全性の見地からメーカー側が自主的にタール色素の配合を控えたり規制を行っていたりするケースもあります。
なお、医薬部外品または化粧品に属する染毛剤及び洗髪用品については上記Ⅰ、Ⅱ、Ⅲで許可されていないタール色素でも「人体に対する作用が緩和なもの」であれば使えることになっています。
化粧品におけるタール色素の扱いは国によって違います。たとえば米国では目のまわりにはタール色素の使用は認められていません。一方EUでは、化粧品に配合できるタール色素の数が日本や米国と比べてはるかに多くなっています。(2012年1月現在)
詳しくは、厚生労働省の以下のファイルをご参照ください。
医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令(抜粋)(PDF 74.9 KB)
注1 コールタールベンゾール、トレオール、ナフタレン、アントラセンなど
花やお野菜、木の皮や根っこ
虫からも取れる天然色素
ベニバナの紅に代表される天然色素は古くから化粧品に用いられてきました。ですが、天然色素には色の付きや持ちが弱く、光や薬品に対しても耐性がないという欠点があり、合成色素が安く生産できるようになってからは食品以外での使い道は減っていました。それでも近年の「自然派化粧品」のブームによって天然素材への理解が進み、天然色素が化粧品に配合されることもまた増えてきました。
天然色素の多くは人体への安全性が高く、漢方薬のような薬理作用があるものも存在するなど良い点がたくさんあります。ただ、化粧品への配合を考えた場合に以下のような欠点もあり、メリット・デメリットをよく考えて使いこなす必要があります。
- 色素によっては安定供給が難しく、価格が高いものもある
- 耐熱性、耐光性、耐薬品性に劣るものが多い
- 着色力(染着性)が一般に悪く、時間がたつと変色する
- 天然色素同士でブレンドしても、好みの色調を得ることが難しい
- 水性・油性などの性質を変えることが難しいので、化粧品の種類によっては配合できないものもある
- 原料中に含まれる色素以外の物質によって、臭みや嫌な味が出ることがある
化粧品に用いられる主な天然色素には以下のようなものがあります。
区分 |
天然色素名 |
表示名称 |
色調 |
原料 |
カロチノイド系 |
β-カロテン |
β-カロテン |
黄橙色 |
ニンジン,柑橘類 |
カプサンチン |
パプリカ色素 |
橙赤色 |
パプリカ,トウガラシ |
ビキシン |
水溶性アナトー |
黄橙色 |
ベニノキ |
リコピン |
リコピン |
橙~赤 |
トマト |
カンタキサンチン |
カンタキサンチン |
赤 |
きのこ |
クチナシ青 |
クチナシ青 |
青色 |
クチナシ |
クチナシ黄 |
クチナシ黄 |
橙黄色 |
クチナシ |
キノン系 |
カルミン酸 |
コチニール |
青赤色 |
エンジ虫 |
シコニン |
シコニン |
赤紫色 |
紫根 |
ラッカイン酸 |
ラッカイン酸 |
橙赤色 |
ラックカイガラ虫 |
フラボノイド系 |
カルサミン |
ベニバナ赤 |
赤色 |
ベニバナ |
サフラワーイエロー |
ベニバナ黄 |
黄色 |
ベニバナ |
ルチン |
ルチン |
黄色 |
ソバ |
クエルセチン |
クエルセチン |
黄色 |
黒カシの皮 |
ポルフィリン系 |
銅クロロフィル |
銅クロロフィル |
緑色 |
緑葉、蚕糞 |
銅クロロフィリンナトリウム |
銅クロロフィリンNa |
緑色 |
緑葉、蚕糞 |
ジケトン系 |
クルクミン |
クルクミン |
黄色 |
ウコン |
私たちが普段使っているカラーメイク製品は、さまざまな性質を持つ色材類を巧みに組み合わせる技術によってできあがっているんですね。
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