ロウ類・炭化水素類

溶けにくく艶があって酸化しにくい
化粧品作りにはロウが大活躍

ロウ(ワックス)とは高級脂肪酸高級アルコールが反応してできる、エステルという種類の化合物。油脂と同じく、自然界からたくさんの種類が得られます。ロウというとロウソクやミツロウのような「常温で固体」のものをイメージしがちですが、実は液体(マッコウクジラ油、ホホバ油)や、軟膏状(ラノリン)のものもあります。

ロウは口紅、軟膏、クリームや乳液の大切な原料ですが、中でもスティック口紅はロウ抜きでは作れないとまでいわれます。それというのも、ロウはほかの油性原料とはかなり違う特性を持っているから。具体的には高融点(高温でも溶けにくい)、粘度(強い粘りがある)、光沢、抱水性(水分を抱き込む性質)、乳化性、抗酸化性(酸化に強い)など。確かに、どれも使用感のよいスティック口紅を作るために欠かせない条件ですよね。

これら独特の性質は、ロウを構成する高級脂肪酸と高級アルコールに、比較的多くの炭素(20~50くらい)が含まれることが原因といわれます。また、遊離脂肪酸や遊離高級アルコール、炭化水素、樹脂類などさまざまな成分が同居していることも関係しているとされます。

化粧品に使われる代表的なロウ類には以下のようなものがあります。(カッコ内は原料)

●植物性のロウ
カルナウバロウ(カルナウバヤシ)、キャンデリラロウ(キャンデリラ)、ホホバ油(ホホバ)

●動物性のロウ
オレンジラフィー油(オレンジラフィーという深海魚)、鯨ロウ(注1)、ミツロウ(ミツバチの巣)、ラノリン(羊の毛)

注1 鯨ロウは、最近はほとんど使用されない

●鉱物性のロウ
モンタンロウ(褐炭)

●ロウの配合目的と効果効能

  1. 製品にしっかりとした固さを与える素材(固化剤)であり、品質を安定させ使いやすくする
  2. 揺変性(ようへんせい)を与え、使用感をよくする
  3. 製品が低い温度で溶けるのを防ぎ、柔らかくなりすぎることによる不便を防ぐ
  4. 分子中に含まれる水をはじく成分(疎水性炭化水素鎖)によって、汗で落ちにくい膜を肌に作る
  5. 商品そのものや、塗ったときの見た目に光沢を与えることで商品価値を上げる
  6. 原料にある程度の固さを与え、製造時に扱いやすくする

炭化水素って、なに?
水と仲良くないのはどうして?

炭化水素 」といわれても、どんなものかイメージが湧きにくいかもしれません。ですが、万能オイルとして人気のスクワランや薬局でおなじみのワセリン が炭化水素の仲間。意外と身近なアイテムなんですね。

化粧品に利用されるのは飽和炭化水素という種類ですが、この炭化水素は性質が非常に安定しています。分子そのものに電気的なかたより(極性)を持たないので電気的な反応が起こらず、酸化されやすい不飽和結合も持たず、揮発性もほとんどありません。スクワランの原料である「スクワレン」は不飽和結合を6個も持っているため非常に酸化されやすいのですが、あらかじめ水添 することで「スクワラン」となり、長いあいだ安定した品質を保つことができます。

炭化水素は文字通り炭素(C)と水素(H)だけでできています。分子の中に酸素(O)はひとつもありません。そのため水(H2O)と似ているところがまったくなく、親水性もほぼゼロ。スクワランがウォータープルーフメイクのクレンジングにおすすめなのは、どちらも親水性が非常に低いという点が似ているのでよく混ざりあうからです。

炭化水素の分子式と物質例

化粧品に使われる代表的な炭化水素類には以下のようなものがあります。(カッコ内は原料)

●石油や鉱物から精製される炭化水素(=鉱物油)
パラフィン(石油)、マイクロクリスタリンワックス(石油)、ミネラルオイル(流動パラフィンのこと)(石油)、ワセリン(石油)、セレシン(地ロウ)

●上記以外のものから主に精製される炭化水素
スクワラン(サメの肝臓・オリーブの果実) ※石油由来の化合物から合成するスクワランもある

●炭化水素の配合目的と効果効能

  1. 油性の汚れを溶かし込んで肌から洗い流し、肌を清潔に保つ
  2. 肌をこする指や器具の滑りをよくしてマッサージ効果を上げる
  3. 外気が冷たくて乾燥しているとき、肌から水分が失われるのを防ぐ
  4. 肌に水をはじく膜(疎水性皮膜)を作り、汗による化粧崩れなどから守る
  5. 肌や毛髪に柔らかさ・なめらかさを与える

(2011年10月初出)

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