特殊配合成分

ホルモン、ビタミン、アミノ酸...
特殊配合成分で機能性アップ

特殊配合成分とは、通常の化粧品原料のほかに、化粧品の効果効能を高めるため特別に配合される成分のことです。

化粧品というものは、基本的には「健康なお肌を清潔に保つ・美しく装う」ために使うものであって、お肌の生理的機能に劇的な影響や変化を与えるもの、つまり「効く」ものであってはいけません(化粧品とは その2「医薬品と化粧品のボーダーライン/どうして越えてはいけないの?」参照)。ですが、化粧品にも「効いてほしい」という消費者の声があるのも事実。その影響もあって、近年では特殊配合成分を添加した薬用化粧品(医薬部外品)の研究開発が盛んになってきています。

化粧品によく使われる特殊配合成分には以下のようなものがあります。

1. ホルモン類
薬用化粧品に配合されるホルモン類は、エストロン、エストラジオール、エチニルエストラジオールなどの卵胞ホルモン(エストロゲン)のみが許可されています。卵胞ホルモンには皮膚の代謝維持、頭髪の発育促進、毛嚢(もうのう)・皮脂腺の成長促進、体毛の発育抑制、血管拡張などの作用があります。

以前は卵胞ホルモンのほかに副腎皮質ホルモンも許可されていましたが、安全性を考えて副腎皮質ホルモンは外されました。また、卵胞ホルモンも使用できる種類や量について厳しく規制されています。

2.抗ヒスタミン剤
お肌が荒れていると、少しの刺激で皮膚の中にあるマスト細胞が破れ、ヒスタミンが放出されてかゆみが出ることがあります。抗ヒスタミン剤はそのようなトラブルに効果があります。

化粧品には、アミノエーテル型の抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、グリチルリチン酸誘導体など)に限って化粧品への配合が認められています。ただしすべての化粧品に許可されているわけではなく、シャンプーやリンス、ヘアトニックなどの頭部に使用するアイテムにのみ配合できます。また、配合できる量にも上限が設けられています。

3.ビタミン類
ビタミン類は皮膚の生理と深い関わりがあり、酸化防止や美白などさまざまな目的で化粧品に多用されます。ただ、すべてのビタミンが化粧品に配合できるわけではなく、たとえばビタミンL1及びL2は催乳性(母乳の分泌を促す作用)があるので使用禁止となっています。

化粧品によく使われるビタミン類には以下のようなものがあります。

1)ビタミンA
レチノールとも呼ばれるビタミンです。表皮細胞と深く関わっていて、欠乏すると表皮が乾燥したりターンオーバーの異常を招いたりするとされます。化粧品には、肌荒れ、しわ、にきび、あかぎれなどの防止・改善を期待して配合されます。ビタミンAの一種であるビタミンA酸(レチノイン酸)は米国ではニキビやシワの治療薬としてクリームやジェル製剤に配合されますが、日本では認可されていません(2012年10月現在)。

ビタミンAは脂溶性なのでお肌に吸収されやすいのですが、その一方で自動酸化が起こりやすく熱や光によっても変質しやすい欠点があります。そのため、化粧品に配合するときはそのままの形ではなく分子構造の一部(OH基)を酢酸または長鎖脂肪酸と結合させて安定性をアップさせたものがよく利用されます。具体的には酢酸レチノール(表示名称:酢酸レチノール)、パルミチン酸レチノール(表示名称:パルミチン酸レチノール)などがこれに当たります。

2)ビタミンB

[1]ビタミンB2
リボフラビンとも呼ばれ、欠乏すると皮膚や粘膜に炎症が起きることが知られています(唇や口角、鼻、耳のまわりの脂漏性皮膚炎など)。リップクリーム(荒れ防止)、ヘアケア製品(フケ防止)、ニキビ用クリーム(ニキビ防止)などに利用されます。ビタミンB2そのままの形で配合されたり、リン酸や酪酸とのエステルの形にしてから配合されたりします。光やアルカリに対して不安定という欠点があります。

[2]ビタミンB6
ピリドキシンとも呼ばれるビタミンで、肌荒れ、にきび、日焼け、かゆみ防止を期待して化粧品や医薬部外品に配合されます。欠乏すると脂漏性皮膚炎が起きたり、ヒスタミンが皮膚に異常に溜まってアレルギー症状が悪化したりすることが知られています。光やアルカリに対して不安定という欠点があります。

化粧品ではピリドキシンのほか、塩酸ピリドキシン(表示名称:ピリドキシンHCl)、ジカプリル酸ピリドキシン(表示名称:ジカプリル酸ピリドキシン)、ジパルミチン酸ピリドキシン(表示名称:ジパルミチン酸ピリドキシン)、トリパルミチン酸ピリドキシン(表示名称:トリパルミチン酸ピリドキシン)などが使用されています。

[3]その他のビタミンB群
ニコチン酸(ナイアシン)は欠乏すると口内炎、舌炎(ペラグラ)、接触皮膚炎、急性・慢性湿疹、光過敏性皮膚炎、脱毛などを起こすことが知られます。

パントテン酸は化粧品によく使用されるビタミンのひとつで、おもに育毛剤に配合されます。欠乏すると脱毛や皮膚炎が起きると疑われています。熱や酸、アルカリに不安定。パントテン酸カルシウム(表示名称:パントテン酸Ca)のほか、アセチルパントテニルエチルエーテル(表示名称:アセチルパントテニルエチル)、安息香酸パントテニルエチルエーテル(表示名称:安息香酸パントテニルエチル)、ジカルボエトキシパントテン酸エチル(表示名称同じ)などが化粧品原料として使われています。

[4]ビタミンC
アスコルビン酸とも呼ばれます。抗酸化作用があるのでメラニン生成の酸化プロセスを抑えることができ、お肌の色素異常沈着防止や美白効果が期待できます。また、ビタミンCは真皮の中にあるヒドロキシプロリンやヒドロキシリジンというアミノ酸の生成・合成にも深く関わっています。これらは表皮を内側から支えるコラーゲン線維の重要な構成要素なので、ビタミンCのサポートによって質のよいコラーゲン線維ができればお肌の弾力を保つことにもつながります。

水、熱、光に対して不安定という壊れやすい物質なので、そのままの形で化粧品に配合されることはほとんどありません。一旦ほかの物質と結合させ、エステルや誘導体という壊れにくい形にしてから化粧品に配合されます。

ビタミンCのエステル ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビルなど
水溶性ビタミンC誘導体 リン酸-L-アスコルビルマグネシウム(表示名称:リン酸アスコルビルMg)、リン酸L-アスコルビルナトリウム(表示名称:アスコルビルリン酸Na)、アスコルビルグルコシド(表示名称:アスコルビルグルコシド)

[5]ビタミンE
トコフェロールとも呼ばれる抗酸化ビタミンです。化粧品に配合すると、紫外線によってもたらされる活性酸素の害(皮膚の炎症やDNAの損傷、過酸化脂質の生成)を抑える、肌荒れ・しもやけ・ニキビなどを防ぐ、末梢の血流量増加による育毛促進・皮膚老化防止などが期待できます。また、ほかの成分の酸化を防ぐ酸化防止剤にもなります。

化粧品には酢酸エステル(表示名称:酢酸トコフェロール)、ニコチン酸エステル(表示名称:ニコチン酸トコフェロール)、コハク酸エステル(表示名称:コハク酸トコフェロール)、リノール酸エステル(表示名称:リノール酸トコフェロール)などが用いられています。dl-α-トコフェロールは自動酸化が起きやすいので特殊配合成分としてはあまり使われていません。

[6]ビタミンD
脂溶性のビタミンで、リン、カルシウムの代謝に重要な役割を担っています。お肌においては表皮の新陳代謝に影響を及ぼします。紫外線(UV-B)によって光分解などを受けるとビタミンD3に変化しますが、はたらきはビタミンDと変わりません。表皮のターンオーバーの乱れが原因の皮膚疾患である乾癬(かんせん)に活性型ビタミンD3が有効であることが証明され、外用薬としても利用されています。

4.アミノ酸
角質層の内部にはNMF(天然保湿因子)という保湿成分が存在していますが、その約40%がセリン、グリシン、スレオニン、アラニンなどのアミノ酸で占められています。アミノ酸がお肌に良いということが明らかになるにつれ、スキンケア製品や育毛剤に広く配合されるようになりました。

NMFの成分であるPCA(ピロリドンカルボン酸)乳酸尿素などを化粧品に配合すると、お肌を保湿したり柔らかく保ったりする効果が期待できます。洗顔などによって失われた自前のNMFを多少補うこともできます。プロリンという成分は特に高い保湿力があり、PCAや乳酸と一緒に配合すると相乗的に吸湿効果が上がることが知られています。

お肌の保湿以外の使い方としては、パーマ用の薬液にシステインが、クリームや乳液における中和剤としてL-アルギニンが用いられたりもします。

5) 収れん剤
発汗抑制剤とも呼ばれ、皮膚のタンパク質、特に汗腺の開口部を凝固・収縮させることで汗が出るのを抑える薬剤のことです。アストリンゼントやアフターシェーブローションなどに、医薬部外品ではデオドラント製品に配合されます。

原料の性質によって陰イオン系、陽イオン系の2種類に分けられます。陰イオン系には有機酸が多く、収れん作用は比較的穏やかです。植物抽出物にも含まれ、古くから化粧水などに利用されています。陽イオン系はアルミニウムや亜鉛に酸が結合した化合物(金属塩)が多く用いられ、水に溶けて分解したときにできる酸が収れん作用を起こします。収れんパワーは強いのですが、その分お肌に対して刺激になることもあるので注意が必要です。

陰イオン系 クエン酸、酒石酸、乳酸、タンニン酸(いずれも表示名称同じ)、およびそれらを含む植物抽出物など(ハマメリス、アロエ、サルビアなど)
陽イオン系 塩化アルミニウム(表示名称:塩化Al)、硫酸アルミニウム・カリウム(ミョウバン)(表示名称: 硫酸(Al/K))、パラフェノールスルホン酸亜鉛(表示名称:フェノールスルホン酸亜鉛)など

6) 動植物抽出成分
日本では古くからヘチマ水やハマメリス水を配合した化粧水がありましたが、1970年代に入ると化粧品に動植物抽出物を配合する「自然派化粧品ブーム」が起こりました。これらの天然物はアミノ酸やタンパク質、糖、脂質、ビタミンなどを含み、保湿や収れん、消炎や殺菌などお肌のためになるものがたくさん含まれています。

動植物抽出成分の中には、「昔から使われているから」というだけで安全性が科学的に確かめられないまま化粧品に配合されるものもあります。人に対する発がん性や毒性などを含むものもあり、注意が必要な場合があります。

効能・効果から見た生薬類の例

収れん ハマメリス、オドリコソウ、シラカバ、ダイオウなど、タンニンを有するもの
消炎 カンゾウ、オウレン、シコン、西洋ノコギリソウ、ヒリハリソウ、アロエなど
殺菌 カミツレ(アズレンを含有)、ユーカリなどの精油類、ヒノキチオールなど
紫外線防止 アロエ、マロニエ、β-カロテンなど(フラボノイド類を含有するもの)
皮膚賦活
(新陳代謝促進、血行促進、創傷治癒)
ニンジンエキス、アロエ、シコン、リリー、ヘチマ、マロニエ、オオバク、ベニバナなど

(2012年10月初出)

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