おしえて!おそらさん

界面活性剤はどんなものに使われているの?

界面活性剤の役割を知って賢く化粧品を選ぼう

化粧品研究者 おそらさん

現職の、某化粧品メーカー研究員。豊富な知識と明快な語り口で石けん楽会に数々の名発言を残す。趣味は旅行。

Y菜さん

20代半ばOL。乾燥肌。冷え症なのが悩み。

N美さん

40代後半主婦。テニスが趣味。肌のくすみが気になる。

編集者

30代前半フリーランス。しみ、大人ニキビが悩み。

Y菜

界面活性剤って結構いろんなところで役立ってるんですね。でもその一方で「乳化剤や分散剤不使用!」って宣伝してたり... 一体、界面活性剤ってイイものなのかワルイものなのか分からない感じ。

おそら

そうですねぇ... まず大前提として、日本の化粧品って安全なんですよ。たとえば新しい化粧品原料を売り出すときは、メーカーが自発的に毒性や刺激性試験を行ってその結果を資料に添えるんですね。そこまでしないと取引先に信用してもらえないので。

N美

そのあたりのモラルの高さというか、過剰品質感というか、いかにも日本人って感じね。

おそら

そうですね(笑) だから、そういう「不使用!!」みたいな宣伝はあまり気にしなくてもいいと思いますよ。

編集者

そもそも化粧品は水と油を混ぜたり、顔料を液体中に分散させたり、普段の状態ではムリなものを作るわけですね。そういうことをしたかったら、やはりそういうはたらきを持つものが必要になるのではと思いますが。

N美

あとね、界面活性剤を使うと美容成分がよく肌にしみ込むって雑誌で読んだの。これ、ホント?

おそら

本当ですよ。角質層は「油っぽい」ので油溶性の成分をよく吸収します。でもそれより内側の組織は逆に「水っぽい」から水溶性成分のほうがよく入る。ただ、健康な肌は角質層がバリアになっているので、内側の組織に水溶性成分がたどり着けないようになっているんですね。

Y菜

水溶性成分が角質層バリアを突破するのに界面活性剤が役立つんですね。そういえば、角質細胞をつないでいるセメントみたいな... 細胞間脂質? これも界面活性剤と似てるんじゃなかったかな... お肌の中で「水分をサンドイッチ」っていうのが印象に残ってます。

おそら

ああ、親水基と親油基があって、親水基同士で向かい合って水分を挟み込んでいる「ラメラ液晶」という状態です。これも乳化物の一種ですね。(編注:「角質層と保湿」参照)

N美

確か、皮脂膜も天然のエマルションよね。あら、だったら「化粧水あとはオイルだけ」っていうお手入れはあんまりおすすめじゃないってことかしら。(編注:「皮脂膜とお肌の保護」参照)

おそら

んー、まぁ本人が気持ちよく使えて、お肌にトラブルも出ないなら構わないと思います。ただ、肌へのなじみやすさはオイルよりエマルションが上ですね。

編集者

では、化粧品には基本的に界面活性剤が入っているほうが、むしろ好ましいということになりますか?

おそら

いや、あくまでも化粧品の種類によりますね。必要ないのに使ったり、必要以上の量を入れたりするのはムダですし、お肌への負担になります。要らないものは入れない、が大原則だと思います。

Y菜

あとね、界面活性剤を入れると見栄えのいいものを安く早くたくさん作れるから...ってケースもあるって。そういう理由で使うのはホント止めてほしいなぁ。

N美

化粧品の種類によるってことは...たとえば化粧水なんかは界面活性剤抜きでもいけそうよね。

おそら

そうですね。界面活性剤なしでも作れます。油溶性ビタミンや精油を可溶化した化粧水もありますが、その手の成分は乳液やクリームに入れたほうがより効果的にお肌に届けることができます。

編集者

日焼け後に使うカラミンローションは使うたびに振りますよね。これは手動で分散させているようなものですが、結構用は足りてますよね。

N美

あのねぇ、実は可溶化と「溶ける」の違いがよく分からないのよ。可溶化はサイズが小さいから透明なんだっていうけど、たとえば水に溶けた砂糖だって小さくなったから見えないんじゃないの?

おそら

ああ、確かに分かりにくいかも。そうですね... 可溶化されたものはミセルに取り込まれて小さい粒になります。けど、分子構造は変わらないんですよ。40人のクラスが4人ずつ10個の班に分かれたようなイメージです。

Y菜

ミセルに取り囲まれて、グループは小さくなったけど個々の分子には変化がない... じゃあ砂糖が水に溶けると分子が変わっちゃいますか?

おそら

変わるというか... 砂糖が水に溶けると、それぞれの砂糖分子を複数の水分子が取り囲むんですね(水和)。水に溶ける=水和物に変化するということなんです。分子のサイズが少し大きくなりますが、それでも光を反射できないくらい小さいので、可溶化で見られるチンダル現象も起きません。

N美

あ、なるほど。自然に溶けるものだったらミセルという界面活性剤の囲いは必要なくて、それぞれの分子に直接水がくっつける。だから透明に溶け込めるのね。

Y菜

ミセルってね、大体どのくらい大きくなったら「透明」じゃなくなるんですか?

おそら

そうですね... 乳液状に白く見えるのは大体直径1マイクロメートル以上でしょうか。0.05以下だと透明になって、その間だと半透明という感じです。

N美

ミセルって、いつも丸い形なの?

おそら

いえ、棒状や層状のミセルもありますよ。界面活性剤の濃度が高いときにできます。可溶化すべきものがすごく多かったり、界面活性剤をたくさん使ったりというケースですね。

Y菜

可溶化された物質が、化粧水の中で分離したり沈殿したりってことはあるのかな。

編集者

あ、そういえば。大分前、化粧水を放置していたら、最初透明だったものが少し濁ったことがありました。これは可溶化された成分になにか変化があったということですか?

おそら

可溶化は、基本的にはすごく安定なんです。ただ、100%安定というわけでもなくて、ごくまれにミセル同士がくっついて大きくなることもあります。そうなると編集者さんが見た「濁った」感じ... つまり可視光線でのチンダル現象が見えることもあります。

N美

じゃあ、編集者さんすごく珍しいものを見たのかも。でも、可溶化がそこまで安定なのはどうして?

おそら

粒が小さいからですね。物質を可溶化するときに使う界面活性剤の量って、乳化分散のときと比べて割合的にすごく大きいんですよ。でないと、ミセルの粒が大きくなって透明にならないから。

Y菜

そうか。小さいから、すぐに浮いたり沈んだりしないし、もしそうなってもぼやっとしか見えないんだ。

編集者

可溶化に比べて乳化は難しい、特に乳液は分離しやすいとのことですが、やっぱり作るときにも相当気をつかいますか。

おそら

ええ、つかいます(キッパリ)。試作品段階では製造後1ヶ月足らずで分離することも珍しくなくて、そうなるともう処分しかありません。私も何百回泣いたことか。

Y菜

おそらさんでも! そういえば、手作り本にも乳液のレシピってあんまり載ってないかも。乳液って書いてあっても写真見たらクリームって感じで... そうか、やっぱり乳液って難しいんだ。

N美

何かこう、これとこれを配合するならこの乳化剤で解決、みたいな決まりはないの?

おそら

乳化剤の性質を表したHLBがそれに近いですけど、でも完璧じゃないですね。なにせ原料の種類が膨大なので... 炭化水素みたいに水と全然なじまない油もあれば、高級アルコールみたいに親水性のあるものも。水溶性の原料でも同じ。

Y菜

何か、もう知識と経験とカンの世界みたい。メーカーごとに門外不出の秘伝レシピとかあったりして。

おそら

そうですよ。増粘剤で粘度を上げるとか、乳化剤以外に乳化を助けるはたらきのあるものを配合するなど、安定化させるためにいろいろ工夫をしています。

N美

そうやって苦労して作った乳液、何年くらい安定しているものなの?

編集者

薬事法では、「化粧品は製造後3年間は品質が安定していなければならない」とされているそうです。3年以内に変質する恐れがあったら「使用期限」を表示する義務がありますね。

Y菜

え、売り出す前に3年も試験? なんか、試験中にトレンド変わっちゃいそう...。

おそら

そうなんですよ。だから大抵は「加速試験」ですね。たとえば40℃の恒温器の中に6ヶ月入れる。それで分離がなければ常温(15~25℃)で3年間安定とみなします。まぁ実際は40℃で3ヶ月、50℃で1ヶ月という条件でテストすることが多いですが。

N美

乳液、これからはもっと大事に扱うわ。暑くなったら洗面所じゃなくて冷蔵庫に入れるほうがいいかしら。

おそら

あ、それは止めてください。エマルションは高温に弱いんですが、急な温度変化にも弱いんですよ。洗面所なら大丈夫じゃないですか。

N美

構いすぎもよくないのね。ところでね、基礎知識に書いてあったけど、乳液ってふたつあるじゃない。水の中に油滴が散らばってるのと、その逆のと。それ、見分ける方法ってあるの?

おそら

エマルションは外相... 土台になる液体と同じ性質の液体を加えるときれいになじむ性質があります。だから調べたい乳液と水を混ぜたとき、水となじんだらo/w型。水の中に油滴タイプですね。

Y菜

なじまなければ、油の中に水滴が混ざっているw/o型。面白そう。家に帰ったら調べてみようっと。

N美

いつも思うんだけど、石鹸も界面活性剤でしょ? 乳化分散可溶化にもっと使えばいいのに。どうしてそういうアイテムが少ないのかしら。(編注:具体的な製品名はCheck pointを参照)

おそら

そういう場面で石鹸を使うのって難しいんですよ。うまく扱わないとできあがりがボソボソになったり、時間が経つと固くなったり... だから、ほかの界面活性剤の補助剤として使われるほうが多いですね。

Y菜

あと、石鹸が入るとちょっとアルカリ性に傾くじゃないですか。それもお肌の刺激になったりとか?

おそら

それもありますね。ただ、補助の乳化剤としての石鹸は重宝されてますよ。「反応乳化」というんですが。原料の中にアルカリと脂肪酸を配合しておくと、混ぜている最中にこれらが出会って石鹸ができますね。それがほかの原料を乳化するんです。

N美

あら面白い。具体的にどんな成分を入れるの?

おそら

アルカリ剤としては苛性カリ(水酸化カリウム)やアルギニン、脂肪酸だとステアリン酸などが多いですね。

Y菜

反応乳化、手作り本に載ってました。昔ながらの「バニシングクリーム」が反応乳化でできているんですよね。弱油性だから割とサラッとしてて使いやすいって。

N美

それ、祖母が愛用してたわ。白く見えるけど肌に塗ると消える(vanish)からそういう名前なんだって。あ、そうだ。そのメーカーがね、乳化してないクレンジングクリーム出してるのよ。ワセリンみたいな。乳化していない「クリーム」って、ありなの?

おそら

ええ、油相100%のクリームというのもありますよ。拭きとり用のメイク落としに昔はよく使われていました。

編集者

メイクと界面活性剤の関係といえば、やっぱり分散でしょうか。色をきれいに出すためには顔料を均等に混ぜる必要がありますよね。

Y菜

顔料も性質がいろいろありそう... 大きさとか重さとか。

おそら

そうですねぇ、大きさは直径0.01~10マイクロメートルくらいでしょうか。ラメとして使われる雲母チタンなどは5~10マイクロメートルなので、かなり大きいほうですね。

N美

直径が1000倍違うの?! そんなものを組み合わせて均等に分散させるって、すごい技術ね。

Y菜

リキッドファンデなんかも、ただでさえ不安定な乳液にいろんな顔料を分散させるんだから... 考えてみたら相当ムリな話かも。

おそら

そうなんですよ。大きさだけでなく、顔料ごとに水や油への濡れやすさも違うし比重も形も違う。同じ顔料の粒子が集まって二次粒子ができると、そこでまた形や大きさの差がでてきてしまったり。

Y菜

だから、リキッドファンデは振ってから使う製品も多いんですね。顔料がムラになりやすいから

N美

その点、粉のままのアイテムって界面活性剤要らなさそうよね。フェイスパウダーとか、パウダーファンデーションとか、アイシャドーとか。

編集者

スティック型の口紅も乳化剤なしで作れるそうですよ。グロスや半固形・ジェル状になると顔料の分散剤として界面活性剤が入っているものもあるそうですが。

Y菜

スティック型でも「濡れたようなツヤ」とか宣伝しているのは水溶性保湿成分が入ってそう。だったら乳化剤要りますよね。それを見分けるには全成分表示のチェックと... あと「配合目的」も?

おそら

そうですね。配合目的はメーカーサイトで公開されていることもあります。乳化、分散、可溶化、などと書かれていたらその成分は界面活性剤である可能性が高いです。

N美

界面活性剤について大分判った感じ。けど、どうして「活性剤」なのかしら。界面「軟化剤」とかのほうがイメージしやすいんだけど。

おそら

ああ、確かに分かりにくいかも。そうですね、界面張力が強いと、ほかの界面とはなじみませんよね。じっと固まっちゃって。その状態をゆるめて動きやすくする、つまり活性化する、ということなんだと思います。

編集者

ほかのものとなじみやすくする... 学校でいうと、ひとクラスだけで固まるのではなく、学年全体で混ざって活動する感じでしょうか。校庭などで。

Y菜

あ、それ分かりやすいです。でも私、校庭でみんなで遊ぶって実は苦手だったなー。休み時間はマンガ描いてたかったから。

N美

実は私も... 図書室でひとり本を読むのが一番楽しかった。今思えばかなり界面張力の強い子だったわね~(笑)

おそら

今のおふたりはとても親しみやすい感じですが... どちらも石鹸をお使いですし、きっとよい具合に反応乳化されたんですね。

編集者

うまいですねぇ。おそらさんに座布団1枚(笑) では皆さま、今日はこの辺で。

(2011年7月初出)

チェックポイント

  • ◎界面活性剤=悪、ではない。石鹸だって界面活性剤です。
  • ◎適度な界面活性剤は使い心地のよい化粧品作りに役立つ。特に乳液やクリームは界面活性剤なしで作るのは難しい。
  • ◎しかし、必要でないものにまで入れるのはよくない。化粧水やパウダー状のメイクアイテム、スティック状の口紅などは界面活性剤がなくても十分よいものが作れる。
  • ◎界面活性剤が入っているかどうかは、全成分表示か配合目的をチェック。「乳化」「分散」「可溶化」の文字があったら界面活性剤が入っている可能性大。

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