皮脂膜とお肌の保護

わずか0.5ミクロン(1/2000ミリ)の薄さでお肌と毛髪の表面をコートしている皮脂膜。皮表脂質膜ともいわれるこの膜は、細胞間脂質NMFとともにお肌のうるおいを守るだけでなく、さまざまな働きをしています。

細菌やアルカリからお肌をガード
皮脂膜は天然の保護クリーム

皮脂膜は、皮表脂質(皮脂角質細胞由来の脂質がほんの少し混じったもの)に汗などの水分が混ざってできています。この水分と油分(皮表脂質)は、皮表脂質に含まれるコレステロールリン脂質などの「天然の乳化剤」によって乳化されクリーム状に混ざるので、私たちは自ら作り出したスキンクリームによって、お肌や髪を保護していると言えます。

また、健康なお肌の皮脂膜は、pH4.5~6.0の弱酸性。酸に弱いことが多い細菌やカビなどが肌の上で増えないようガードしています。弱酸性が保てるのは皮脂に含まれる脂肪酸トリグリセリド遊離脂肪酸ジグリセリドなど)と、汗の中の乳酸やアミノ酸のおかげ。アルカリ性の石鹸で洗っても、肌が健康ならこれらの酸性物質がすぐにアルカリ分の中和を始めるので、洗顔後15分~2時間位でお肌のpHは弱酸性に戻るのです。このように、お肌のpHを一定に保とうとする働きをアルカリ中和能といいます。

皮脂膜の主役・皮脂

皮脂は1日に約1~2g分泌されますが、その量は年齢や性別、気温や湿度によっても変わります。分泌がもっとも盛んなのは新生児期と思春期以降。女性は20代、男性は30代に分泌量のピークを迎え、その後は年齢とともに少しずつ減ってゆきます。一般的に女性より男性の肌が「脂っぽい」感じがするのは、男性ホルモンが皮脂腺を大きく発達させて皮脂分泌を増やす働きをするからです。

皮脂を作っているのは皮脂腺。その数・大きさ・形は体の部分によって違います。数が一番多いのは顔と頭で、1cm2あたり400~900個もあります。中でもTゾーン(額や眉間、鼻)や口の周り、下あごなどに多く、顔以外だと胸や背中の正中線沿いなど体の中央部ほど沢山あります。逆に、手や足など体の末端に行くほど少なくなり、手のひらや足の裏に皮脂腺はありません。だから、Tゾーンがベタベタしたり胸や背中にニキビができたりするのに、かかとや手先は荒れやすいんですね。

皮脂腺は毛包(毛の根元を包みこんでいる袋状の部分)につながっているので、皮脂も毛を伝って毛穴から出てゆきます(注1)。皮脂がほどよく肌にゆきわたると、毛包内の皮脂は上から押さえられる形になって毛穴から出られなくなります。でも、洗顔などで古い皮脂膜がなくなると上からの圧力がなくなるので一挙に肌に出てゆき、2~3時間で皮脂膜は元通り。この仕組みによって、肌の上の皮脂膜は一定の厚さをキープできるのです。

季節によって皮脂分泌量が変わるのは、この仕組みによるもの。おでこの夏の皮脂量は冬の2倍ほどにもなりますが、これは、脂というものは低温では固まってしまうため。つまり、気温の高い夏の方がスムーズに肌の上に出られるのです。もともと皮脂分泌が控えめな女性の場合、冬にはさらに減ってしまうので、その分を補うお手入れに気をつける必要があるというわけです。

皮脂状態の良し悪しが
大人ニキビを左右する!?

皮脂膜の原料となって肌を守ってくれる皮脂。でも、状態が良くないとトラブルの元にもなります。例えば、古い皮脂が肌に残り続けたとき。皮脂の中のスクワレンが紫外線で酸化されて過酸化物(スクワレンハイドロパーオキサイド)ができ、それが細胞膜を傷つけたりコラーゲンにムダな橋を架けて肌を硬くし、老化を進めたりします。

皮脂が少なすぎると、肌がアルカリ性になって細菌やカビに弱くなり、オデキや吹き出もの、とびひなどの原因に。逆に多すぎてもpHが酸性に傾きすぎたり、肌がベタついてホコリや雑菌がくっつきやすくなったりし、それらの刺激が脂漏性湿疹や吹き出もの、ニキビなどをできやすくします。

多くの人が悩まされるニキビは、皮脂が毛穴に詰まって起こるトラブル。毛穴詰まりのきっかけを作るのは主に遊離脂肪酸という物質ですが、これはアクネ桿菌表皮ブドウ球菌という皮膚の常在菌が出すリパーゼ(脂肪分解酵素)が皮脂を分解してできたもの。この遊離脂肪酸がお肌を刺激すると、毛穴付近の角質は角化サイクルが乱れてぶ厚くなり、角栓となって毛穴を塞ぎます。

ニキビの要因・図解

こうして出口をなくした皮脂が毛穴に溜まった状態が、ニキビの始まり、コメド(面皰・めんぽう)です。そしてアクネ桿菌がその皮脂をエサに増えると炎症が起きて赤ニキビに、さらにそれが化膿すると黄ニキビへと進んでしまうのです。

思春期のニキビは成長過程におけるホルモンの乱調が大きな原因なので、時が経てば落ち着くことがほとんど。でも大人のニキビはそういうわけには行きません。きちんと洗顔して余分な皮脂を取りのぞくことが大切なのはもちろんですが、それ以外にはどんなことに気を付けてお手入すればよいのでしょうか?

注1 まぶた・唇・鼻粘膜などには、毛包とつながらずに独立して存在する皮脂腺もある

(2008年12月初出)

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