おしえて!おそらさん

界面活性剤を使った化粧品、何をどう選べばよい?

「植物性」でも要注意?! 乳化剤見きわめのコツとは

化粧品研究者 おそらさん

現職の、某化粧品メーカー研究員。豊富な知識と明快な語り口で石けん楽会に数々の名発言を残す。趣味は旅行。

Y菜さん

20代半ばOL。乾燥肌。冷え症なのが悩み。

N美さん

40代後半主婦。テニスが趣味。肌のくすみが気になる。

編集者

30代前半フリーランス。しみ、大人ニキビが悩み。

Y菜

界面活性剤入りだと化粧品の使い心地がよくなったり美容成分がお肌によく浸透したりするんですよね。だったら、防腐剤とか香料とか、そういうものもお肌に入りやすくなっちゃうんですか?

おそら

そうなりますね。精油や香料、化粧品に使われる代表的な防腐剤... パラベンやフェノキシエタノール、あとヒノキチオールなどは油と水の中間的な性質を持つので、界面活性剤によってより吸収されやすくなると思います。

N美

あら、ヒノキチオールってヒノキの成分でしょ? それなのにパラベンなんかと同じ扱い?

編集者

化粧品基準によると、ヒノキチオールは「化粧品の種類により配合の制限がある成分」の中に入っていますね。

おそら

そうなんですよ。クリームなど洗い流さない製品に配合するときは100g中の最大配合量が0.1g、ハミガキなど粘膜に触れる製品だと0.05gが上限。天然成分ですが、れっきとした「防腐剤」の仲間ですよ。

Y菜

じゃあ、そういう防腐剤の類をお肌に絶対入れたくないって思ったら、そういうものが一切入っていない製品を選ぶしかない...?

おそら

そういうことになりますね。パラベンは旧指定成分でもありますから嫌うメーカーも多くて「ノンパラベン」商品は結構多いです。そして、フェノキシエタノールやヒノキチオールを代わりに入れてるケースが多いですね。

N美

そうそう、このあいだも「防腐剤(パラベン)不使用」っていう化粧品があったから成分チェックしてみたの。そしたら確かにパラベンは入ってなかったけど、ほかにいろいろ...。必要最小限の防腐剤まで目の敵にはしないけど、こういう紛らわしい表示はなんとかしてほしいわ。

Y菜

チェックするだけで疲れそうですよね。そういうものから自由になりたかったら結局全部手作りになるのかなぁ。

N美

手作りねぇ。無精者にはツライ選択肢だわ(笑) 液体石鹸とオイルを混ぜるクレンジングくらいなら作ったことあるけど。

編集者

あ、私もです。洗い流せて面白いんですが目に入るとすごく痛かったのを覚えてますよ。

N美

アイメイク落としには向かないわよね。そうだ、そのクレンジング、作りたては軟らかいのに何日かしたらカチカチになっちゃったの。オイルと液体石鹸半々で作ったんだけど、なにか間違ってたかしら?(石鹸百科:液体石けんとオイルで作るクレンジング剤別ウィンドウで開きます参照)

おそら

そうですね~、その配合だとオイルが多すぎるような。液体石鹸の石鹸分が30%として、オイル50%、石鹸15%、水35%なので。このエマルションは水の中にオイルが散らばるo/w型ですけど、これは内相(オイル)の割合が高いと固まりやすいんですよ。

Y菜

じゃあオイルと液体石鹸の比率を3:7くらいにしたらどうかな? オイルが30%で水が50%くらいになりますよ。

おそら

そうですね。手作りだと分離しやすいので使う前によく混ぜてください。あと、水を多くすると変質も早まりますから一週間を目処に使い切るのが安全ですよ。

編集者

おそらさんはこの手作りクレンジングを愛用されているんですか?

おそら

いや... 実はそうでもないです。普段はメイクしませんし、したとしても石鹸の一度洗いで充分な軽いメイクなので。

Y菜

でも、たまにはしっかりメイクするときもありますよね? そのときはどうしてるんですか?

おそら

そうですね、スクワランなどの炭化水素でメイクを浮かせてティッシュオフ、その後に石鹸洗顔かな。クレンジングをせずに石鹸で2度洗いすることもあります。基本的に、あんまり「手作り」はしないほうですね。

N美

なんか意外ね。おそらさんだったら専門知識を生かしていろいろ作れそうなのに。

おそら

うーん、設備の整わないところでは衛生面がどうしても気になって。職業病みたいなものですね(笑)

Y菜

そうなんですか~。私は最初は必要に迫られて仕方なく...だったんですけど、だんだんそれが楽しくなってきたんです。次はどんな原料試そうかな、どんな香りのクリーム作ろうかなって。

おそら

趣味と実益を兼ねられていいですねぇ。あ、そういえば手作り系乳化剤でちょっと気をつけたいことが。Y菜さん、乳液は作ったことありますか?

Y菜

いえ、クリームまでです。乳液はレシピ自体少なくて... 乳液手作りに何か問題があるんですか?

おそら

基礎知識でも触れましたが、手作り用「植物性乳化ワックス」として売られているものの大部分は、実はEO付加型の石油系界面活性剤なんですよ。

編集者

それはまたおかしな話ですね。石油系なのに植物性とはこれいかに?

おそら

その手のEO付加型は親油基が植物由来の脂肪酸なんです。それに石油由来のEO(酸化エチレン)が親水基としてくっついているんですね。

N美

じゃあ、一応植物由来の成分も入ってることは入ってるのよね?

おそら

ええ。でも、植物由来の部分は親油基だけ。そして石油由来のEOが親水基として少ないもので数個、多いもので数百個くっつくんですよ。そういうものを植物性と呼ぶのはやっぱり正しくないと思います。

Y菜

でも、どうしてそんなものが手作りの世界にあるのかな。手作り愛好者は石油系が嫌いな人も多いのに?

おそら

EO付加型は乳化力がとても強く、しかも安定しているからです。本来、乳液は強いかくはん力がないと作れない難しいアイテムなんですね。それを手混ぜ程度の力で作るためには、かくはん力不足を補う強力な乳化剤がいるんです。

N美

クリームより難しい乳液を「植物性で手作り」にこだわった結果、本末転倒してしまった感じよね...。

おそら

でしょう? というわけで、乳液の手作りはおすすめしたくないんですね。それに、乳液だけじゃなく手作り「クリーム」の乳化剤でも同じような活性剤が出回ってるので... 買うときには表示名称をよくチェックしてくださいね。

Y菜

え、クリームもですか! じゃあもしかして私の手持ちのレシピ本にもEO付加型の乳化剤が使われてるかも... 今日帰ったらよく確認しなくちゃ。

編集者

おそらさんが化粧品取り扱い基準作成されたネットショップでも、EO付加型界面活性剤は取り扱わないんだそうですね。

N美

そういう風にプロがきちんと基準を作ってくれるお店があるのはいいわね。でも「天然」「植物性」「無添加」「石油系」とか、用語の基準が実は存在してないって聞いたこともあるんだけど、そのあたりはどうなってるの?

おそら

そうなんですよ。その線引きが業界内で未だにはっきりしてないんです(だから、私が作った「取り扱い基準」も私の「意見」に過ぎないともいえますね)。EO付加型の「植物性」表示にしても、メーカーによって基準がバラバラなのが現状なんですよ。

Y菜

だから無添加でも「防腐剤無添加(だけど、他にいろいろ入れてます)」みたいな表示が許されるんですね。そういうのにひっかからないよう、私たちもきちんと成分表示を読み解く力をつけないと。

N美

まぁとにかく手作り用「植物性乳化ワックス」は止めたほうがいいのは分かったわ。じゃあ、化粧品メーカーにとっては「植物性」のEO付加型界面活性剤はどういう存在なのかしら。やっぱり重宝されてるの?

おそら

その通りです。EO付加型界面活性剤って異常なくらい数が多いんです。つまりそれだけ需要があるんですね。EOの数によってどんな質感のエマルションでも作れる。そのうえ植物性表示の基準もあいまいだからどんなにEOが多くても「植物性でやさしい」とか言えますし。

Y菜

そうなんだ... じゃあEO使わないで親水基も親油基も植物由来、つまり「純植物由来界面活性剤」みたいなのはもしかして少数派ですか?

おそら

そう、圧倒的に少ないですね。あと、そういう活性剤は微生物のエサにもなりやすい。EO付加型に比べて扱いが難しいんですよ。

N美

EO付加型を使わないで乳液やクレンジングを作るのはそれだけ大変ってことね。どんな乳化剤がそれに当たるの?

Y菜

レシチンとか...? レシチンって皮脂にも入ってるし、お肌に低刺激そうですよね。

おそら

そうですね、私はそう考えています。あと、グリセリンと脂肪酸のエステル、たとえばトリグリセリドとかジグリセリドなどは親油性の乳化剤になりますが、これも皮脂の成分なので安全性が高く、肌へもよくなじみます。

編集者

トリグリセリドはグリセリン+脂肪酸3分子、ジグリセリドは脂肪酸2分子ですね。とすると、グリセリンに脂肪酸が1分子だけ結合したモノグリセリドはどうでしょう?

おそら

ああ、モノグリセリドも親油性の乳化剤としては乳化力強いです。皮脂にはほとんど含まれませんが、グリセリン脂肪酸エステルの仲間には違いないですし、低刺激でお肌になじみやすいのでおすすめしたいです。

N美

よかった、私たちが安心して使える乳化剤もちゃんとあるわけね。そういうものを使ってくれるメーカーさんは大いに応援するわよ。

Y菜

ただ、いくら皮膚刺激は少ないっていわれても自分には合わないっていうのもあるんですよね~。「界面活性剤・要注意度ランキング」なんて表があったら便利なのに。そういうのはないんですか?

おそら

うーん、難しいですねぇ...そういうランキングに載るようなものは、そもそも日本の化粧品に配合できないと思いますが...あえて言えば「化粧品基準」「ポジティブリスト」「ネガティブリスト」がそれに当たるでしょうか。

N美

昔あった「旧表示指定成分」のリストは? 界面活性剤だけが載ってるわけじゃなさそうだけど、参考にはなりそうじゃない。(編注:旧表示指定成分について詳しくは、用語集「旧表示指定成分」参照のこと)

おそら

ああ、2001年の全成分表示義務化以前はそれである程度対応していましたね。「人によっては比較的刺激が出やすい成分」のリストなのでY菜さんの目的にも合っていそうです。

Y菜

結構手がかりあるんですね! お役所の文書でちょっと取っつきにくいですけど頑張って目を通してみます。

編集者

今でも「旧表示指定成分」を気にする方は結構いらっしゃるようですね。私の関わっているコスメ雑誌にも時々質問が来ますよ。

おそら

あとね、簡単なことですけど... 新しい化粧品はまずサンプルやお試しサイズで試してから買うかどうか決める、というようなこともお肌を刺激から守るためには有効ですよ。試すのは体調のよいときを選んでくださいね。

N美

自分の肌に合うかどうかは自分にしか分からないものね。口コミや宣伝も参考にはなるけど、そのすべてが正しいという保証はないし。このあいだも、ネットのコスメショップで「鉱物油は不純物が多いから刺激になる」なんてレビューがあったわ。

Y菜

私が前にアレルギー検査のパッチテストしたとき、「比較対象物質」が鉱物油のワセリンでしたよ? 比較対象ってできるかぎり無刺激じゃないとダメだから、そのレビューがホントならワセリンが選ばれるはずないですよね。

N美

へぇ、それは初めて聞いたわ。ワセリンの代わりに水じゃダメなの?

編集者

精製水でも5~10%くらいの人は肌が反応して赤くなったりするそうです。ワセリンだったらまず反応は出ないんだそうで。

おそら

昔は石油精製技術がよくなかったので鉱物油の中に刺激性の不純物が残ることもあって...たとえば女子顔面黒皮症などの原因のひとつかと疑われたこともあったようです。結局よく分からなかったみたいですが。でも、精製技術が格段に上がった今では不純物の心配はほぼなくなりましたよ。

Y菜

あ、ワセリンで思いだした。あのね「バーム」と「軟膏」、ふたつとも乳化されないものを指すってどこかに書いてあったんです... でもクリームみたいな「軟膏」って売ってませんか?

編集者

そういえば、うちの昔からの常備薬ナントカ軟膏は白いクリーム状です。

おそら

あ、そこはちょっとややこしいんですよね。本来、バームも軟膏も乳化されていないものを指す言葉なんです。違いはバームが香りつき、軟膏は無香料というだけで。

Y菜

じゃあそのナントカ軟膏って、もしかして薬事法違反...?

おそら

いえ、そんなことはないですよ。薬を規制する法律のひとつ「日本薬局方」では乳化されたクリーム状の軟膏も認めてるんです。だから実際には「クリーム軟膏」もOK。

N美

編集者さん、常備薬が法律違反じゃなくてよかったわね(笑) ああ、それにしても今回は疲れたわー。久しぶりに化学のお勉強みっちりって感じ。

Y菜

ホントです~。でもお肌のためには大事なことだからお勉強も頑張ろう。実はね、最近、化粧品選びで教えてって同僚に言われることが結構あって。

編集者

おお、それは頼もしいですね。「Y菜のコスメ塾」オープンですか?

Y菜

え~、そんな大げさじゃないですよ(笑) でも、こぢんまりした勉強会みたいなのだったら... ちょっとやってみてもいいかも。

N美

それいいじゃない。ここで話していていつも思うけど、化粧品ってお肌に直接触れるものなのに、私たちの知らないことがすごくたくさんあるでしょ。そういうことを知っていくのは面白いと思うわ。

編集者

実現の暁にはぜひ私にもお声をかけてください! では、Y菜さんの勉強会実現を願いつつ...皆さま、今日はこの辺で!

(2011年12月初出)

チェックポイント

  • ◎「無添加」「植物性」「天然」などの表示に関する統一基準は今の日本にはない。ラベルに「無添加」「植物性」とあっても盲信せず、成分をよく確かめよう。
  • ◎製品購入のときは、きちんとした「取り扱い基準」を持っているショップを利用できるとなお良し。
  • ◎手作り化粧品用「植物性乳化ワックス」は、実はEO付加型の石油系界面活性剤がほとんど。植物性にこだわって手作りする人は気をつけて。
  • ◎レシチン、脂肪酸エステルなどは乳化剤のうちでもお肌に刺激が少ないのでおすすめ。
  • ◎ワセリンに代表される「鉱物油」は、現在はとても低刺激。化粧品選びの選択肢に残す価値はある。

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