おしえて!おそらさん

白浮きしない日焼け止めとナノテク

安全性は? メリットは? ナノ粒子との付きあい方

化粧品研究者 おそらさん

現職の、某化粧品メーカー研究員。豊富な知識と明快な語り口で石けん楽会に数々の名発言を残す。趣味は旅行。

Y菜さん

20代半ばOL。乾燥肌。冷え症なのが悩み。

N美さん

40代後半主婦。テニスが趣味。肌のくすみが気になる。

編集者

30代前半フリーランス。しみ、大人ニキビが悩み。

Y菜

白浮きしにくいノンケミカル日焼け止めが増えたのはすっごく歓迎なんですよね。けど、乾燥&敏感肌で角質層バリアが弱いようなお肌にナノ粒子使うのはどうなんだろうって、ちょっとだけ気になります。

編集者

ナノ粒子の安全性、確かに最近いろいろ記事を目にしますね。2008年ごろにカーボンナノチューブの発がん性について発表があって、そこから化粧品についても言われだしたような。

おそら

そうですね、私のところにも問い合わせが来ます。ただ、角質層バリアについてはほぼ心配ないことが実験で確かめられつつありますよ。

Y菜

あ、だったら嬉しいです、どんな実験するんですか。

おそら

テープストリッピングという手法ですね。人の肌にナノサイズ酸化チタン入りクリームを塗って、その部分に粘着テープを貼ってはがすんです。

N美

セロテープを肌に貼ってはがすと皮膚の細胞みたいなのがテープに付いてくるわよね。あんな感じ?

おそら

そうですね。この手法で観察したところ、角質層の深いところにはナノサイズ酸化チタンはなくて、毛穴の中だけに認められたんです。

編集者

毛穴にはさすがに入るんですね(笑) 穴だからしょうがないですが。

Y菜

でも、お肌がひどく荒れてたりすると思った以上に深いところまで入っちゃうとかありませんか?

おそら

ああ、それについては安全性をさらに確かめていく必要はありますね。ただ、表皮には角質層、顆粒(かりゅう)層、有棘(ゆうきょく)層、基底層と4つの層があります。ナノ粒子といえどそれらすべてを突破して真皮まで達するのはかなり難しいと思いますよ。

N美

あとね、そもそもそういうときには化粧品を塗らないほうがいいんじゃないの? ナノ粒子あるなしに関係なく。

Y菜

あ...それもそうですよね。肌荒れのときはなに付けてもピリピリするから...日焼け止めなんてとても。

編集者

少し専門的な話になりますが、ナノ粒子は血流に乗って脳に入るなどの記事も見たことがあります。これはどうなんでしょう?

おそら

ああ、その手の論文ありますね。そういうのって酸化チタンを皮下注射したり、シャーレや試験管の中で培養した細胞でのテストデータ使ってたりするので、それをそのまま化粧品の安全性に当てはめられるかどうかはよく分からないんですよ。

N美

皮下注射って、そんな使い方の化粧品ないわよね。

Y菜

敏感肌持ちとしてはできるだけ安全性を確かめてほしいですけど、実際にあり得ないような使い方で確かめられても何だか違う気が。

N美

化粧品業界全体では正式な見解って出してないの?

おそら

出てますよ。日本化粧品工業連合会では、ナノサイズ酸化チタンは角質層の深部までは届かないので今のところ安全という見解ですね。メーカーにアンケートを採ったり研究会を設置したりもしてます。

Y菜

そういう活動がちゃんとあるんですね。よかった。

おそら

酸化チタンって化粧品のナノ原料の中では安全性について一番研究が進んでいるんですよ。問題なく使用されている実績も長いですし。

N美

酸化亜鉛とかシリカについてはどうなの?

おそら

それらについては酸化チタンよりもデータは少ないですが、事実上酸化チタンと同じように考えても問題ないと思います。あ、でもひとつだけ注意点。「吸いこむ」のはできるだけ避けてもらいたいんですよ。

Y菜

え、日焼け止めクリームを吸いこむんですか?

おそら

いえそうじゃなくて、パウダーファンデーションやルースパウダー。

N美

あーそういえば、酸化チタンや酸化亜鉛はファンデやお粉にも入ってるわね。顔にバタバタはたいてるときに大きく息したら吸いこんじゃうわ。(編注:「色材原料 その1」参照)

おそら

そうなんですよ。ナノ粒子に限らず、微粒子の類を吸いこむのは呼吸器に非常によくないんですね。だからそういったアイテムを使うあいだはできるだけ息を止めたほうがいいですよ。

Y菜

そうなんだ... でもそこまで行ったらもう化粧品だけの問題じゃないですよね。大気汚染物質とかいろいろあるじゃないですか、吸いこんだらNGそうなもの。

編集者

それは言えてますね。私も花粉や黄砂には毎年手を焼いております(泣)ところで、ナノ粒子はいつごろから化粧品に使われだしたんでしょうか。

おそら

そうですね。ナノマテリアルという用語が一般に言われだしたのが2004年ごろ。化粧品にナノサイズの顔料が使われだしたのは...酸化チタンは1990年ごろから、酸化亜鉛は1995年ごろから。シリカは1971年ごろからですね。

Y菜

え、なんか思ってたよりずっと早い...。

おそら

そうなんです。酸化チタンや酸化亜鉛は昔からベースメイクや日焼け止め製品の定番原料なんですよ。だからよく研究もされていて。1990年ごろから「微粒子」と呼ばれる原料がさかんに採用されはじめ、それが順次ナノ粒子に置きかわり中という感じです。

N美

微粒子のほうがナノ粒子より大きいのね。どのくらい?

おそら

直径が倍、ですね。微粒子は直径200nm以下。そしてナノ粒子は日本化粧品工業連合会の定義によると直径100nm以下です...が、これって暫定的な基準なんですよね。正式な数値は国際的に検討中という感じで。

Y菜

そうなんだ...1nmって10億分の1メートルですよね。そんなレベルの粒子って、なんか想像付かないです。

編集者

そうですねぇ、原子・分子レベルの大きさですから。やはりそこまで小さくないと白浮きは抑えられませんか。たとえば、ナノ粒子の代わりに微粒子を工夫して使うことは?

おそら

微粒子酸化チタンだけで日焼け止め作るとホントにまっ白になります。ちょっと使い物にならないですねぇ。微粒子を使うんだったら配合量を減らして、その分を紫外線吸収剤でカバーしないと。

N美

確かに、昔は散乱剤だけの日焼け止めなんてなかったわね。

おそら

ただ、紫外線吸収剤は人によってはかぶれたり、長時間使うと分解して安全性が下がったりします。あと、水生生物に蓄積するなど環境への悪影響も。

編集者

そういえば、以前オーストラリアのグレートバリアリーフに行ったとき、海に入るなら日焼け止め禁止と言われました。

Y菜

ひとりひとりが使う量は少なくても、それが積み重なれば無視できなくなりますよね。

N美

なるほどねぇ。白塗りは困る。紫外線吸収剤もちょっと。けど、無防備に紫外線に当たるのはもっとダメ...となると、ナノ粒子酸化チタンが今のところベストって感じね。

おそら

あとね、酸化チタンって代えが利かないんです。これほど確実に紫外線を防いでくれて、しかもお肌に刺激が少ない原料ってなかなかないんですよね。

Y菜

ただ、製品を買うときにナノ粒子かそうじゃないかっていうのは一応知っときたいです。でも、パッケージに「ナノ配合!」とか書いてるの見たことないなぁ...。

おそら

そうでしょうね。そこはやはり、メーカーに問い合わせでしょう。

編集者

酸化チタンと酸化亜鉛の光触媒作用も少し気になります。コーティングされていれば問題ないそうですが、そうではない原料が使われていることはあるんでしょうか。

おそら

うーん、そのあたりはメーカーによりますね。コーティングしていない原料を使っているところもあるみたいです。

Y菜

え、じゃあそれを見分けるには...やっぱり問い合わせですか?

おそら

そういうことですね。

N美

日焼け止めのほかに、ナノ粒子を使った化粧品はあるの?

おそら

ありますよ。化粧水、クリーム・乳液の一部や、アイシャドーなどのアイメイク製品。口紅やリップクリームなど。でも一番多いのはやっぱり日焼け止め。その次がファンデーションやお粉ですね。

Y菜

クリーム・乳液のナノ原料って、UVカット乳液なんかの酸化チタンとかですか?

おそら

そうですね。あと、フラーレンを配合している製品も含まれるでしょう。

編集者

フラーレンはナノサイズの抗酸化成分ですね。活性酸素を消せるとかで美容雑誌の記事でも目にしますが、安全性がまだ確実ではないとも聞きました。

おそら

そうなんですよ。光が当たると細胞に悪い作用をするといった報告もあって...それなら抗酸化成分はほかにも沢山あるし、ムリして使うほどではないと個人的には思ってます。

N美

あとね、ナノ粒子とはちょっと離れるんだけど日焼けつながりで...そもそもメラニンは紫外線の害からお肌を守るために体が作るものよね。それを美白剤塗ってわざとできにくくしたり、分解してしまったりして大丈夫なの?

Y菜

言われてみれば...メラニンが少ない白人は紫外線のダメージを受けやすいっていいますよね。

おそら

ああ、確かに理屈ではそうですね。ただ、幸か不幸か美白剤はそこまで強力な物質ではないんですよ。化粧品に配合される量も少ないからまず問題ないです。ただ、ハイドロキノンだけは注意が必要ですけど。

N美

刺激があるとか白斑ができることもあるとか基礎知識に書いてあった美白剤?

おそら

そう、それです。白斑は一度できると元に戻せないんですよ。

Y菜

えー、そんなものが普通の化粧品と一緒に売られてるんですか? どうして?

編集者

90年代から始まる各種規制緩和の一環でそうなったようです。これも「自己責任」なんでしょうか。

おそら

そういうことですね。嫌だと思ったら使わなくていい。リスクを取ってでもシミを薄くしたいなら用心しながら使い、異常を感じたらすぐ皮膚科へ、です。

N美

なんだかモヤッとする話ねぇ... まぁ自己責任というならしっかり調べて自衛するしかないんだけど。

おそら

それで、ハイドロキノンをもっと扱いやすく安全に、ということでできたのがアルブチンという成分なんです。

編集者

1990年代の美白ブームの火付け役になった成分ですね。それまで美白成分といえばビタミンCか胎盤エキスくらいだったのが、アルブチンをきっかけとして続々と新しい成分が出てきたそうで。

Y菜

そういうブームがあったおかげで、今は紫外線よけファッションが堂々とできるようになったんですね。

N美

UV手袋なんかも美白ブームがあったからここまで普及したんだと思うわ。ね、もしまた美白ブームが起きたら、おそらさんはどの成分をイチ押しにしたいの?

おそら

そうですねぇ... 私自身は植物エキスが好き(笑)なので。オウゴンエキス、ボタンエキス(ボタンピ)、マグワ根皮エキス(ソウハクヒ)、カンゾウ根エキス、ユキノシタエキスなどを推しますね。

編集者

抗酸化剤のときに出てきた名前も結構ありますね。

おそら

ああ、そうですね。植物エキスっていろんな物質の集まりなので作用もいろいろなんですよ。それから植物エキス以外だとコメ由来のセラミドもぜひ。

Y菜

セラミドって細胞間脂質の主成分の、アレですか?

おそら

そうそう。マウスのメラノーマ細胞で実験したら、コメ由来のセラミドの美白作用はビタミンCの約3倍という結果が出たそうですよ。

N美

思いだした! この間ね、首の後をうっかり日焼けしたの。かなり赤くなってたからダメ元で美白美容液たっぷり塗ってみたのよね。そしたら翌朝には赤みが引いて元通り。その美容液に「セラミド(コメ由来)」って書いてあったわ。もしかしてこれ、関係ある?

編集者

それはまた貴重な体験ですね... 日焼け後のお肌にはカラミンローションのような抗炎症効果のある化粧品が定番ですが、N美さんが実行されたような積極的な美白ケアも効果的なんでしょうか。

おそら

そうですね、皮膚の黒化直前なら抗炎症・美白・抗酸化成分配合の化粧品でケアするとメラニン定着をある程度防げると思います。もちろんお肌に傷があったり、塗ったら刺激を感じたりしたら止めたほうがいいですよ。

Y菜

そういえばサンオイルも日焼け進行中のお肌に塗りますよね。あれはどうしてですか?

おそら

そうですね、炎症を起こすUV-Bの吸収剤や保湿剤などが入っていたり... あと、効率的に日焼けするためでしょうか。オイルを塗ったお肌は日光を通しやすくなるんです。

N美

へぇ、そういうはたらきもあるの。お肌をオイルでコートして守ってるだけかと思ってたわ。

おそら

オイルが分解してできた「脂肪酸」も日焼けを促しますよ。皮脂や化粧品に含まれる油脂類は時間がたつと単独の脂肪酸になるんですね。皮膚常在菌のアクネ菌や表皮ブドウ球菌が脂肪分解酵素リパーゼを出すので。

Y菜

ということは、顔に残った古い皮脂や化粧品をきちんと洗い流すことも美白につながるんですね。

編集者

あれ? でも美白成分に確かリノール酸ってありませんでしたっけ。リノール酸も脂肪酸の一種ですよね?

N美

そうよ、リノール酸ってゴマ油とかに多い脂肪酸よ。脂肪酸で日焼けしやすくなるんじゃ美白剤の意味ないじゃない。

Y菜

...もしかして、塗ったあとに紫外線を浴びるっていうのがダメ? 夜とか、塗ってから紫外線に当たらなければ大丈夫とか。

おそら

Y菜さん冴えてますね~その通りです。リノール酸は確かに美白成分ですが、これを塗った肌に紫外線を当てると塗ってないときより明らかに肌が黒化しているんです。だからこれは夜用の美白成分なんですよ。

N美

そんなことがあるのね... 私、夜用アイテムを朝に使うこと結構あるわ(汗) 最近老眼が入ってきて細かい文字読むの面倒で。それで間違いに気づかないまま使ってたりするの。

おそら

まあ、たまに間違えるくらいならそんなに重大な問題は起きませんけどね。

編集者

でもハイドロキノンみたいなアイテムもありますし。「取扱説明書をよく読んで正しくお使いください」のほうが安全そうですよ。

Y菜

私は自衛のためにも説明書とかきっちり読みます~。それサボって何度も痛い目に遭っちゃいましたもん。

N美

実は私、家電なんかもしょっちゅう壊すのよね。はじめにマニュアル読まないから。でもお肌にまでそんなことじゃ困るわ。これからは化粧品も家電も、書いてあることきちんと読むようにする!

編集者

説明書をよく読んで、お肌はキレイに家電も長持ち。めでたしめでたしですね。ではみなさま、今日はこの辺で。

※このページは2012年10月時点で判明している知見に基づいて作成されました。

(2012年10月初出)

チェックポイント

  • ◎日焼け止めに使われるナノ粒子の安全性については、健康なお肌に塗った場合はそれほど心配する必要はない。ナノ粒子を敬遠して日焼け止めを使わず紫外線に当たるほうがお肌へのリスクは高い。
  • ◎パウダーファンデーションやルースパウダー(白粉)などに配合されているナノ粒子は吸いこまないよう注意。化粧品のナノ粒子だけでなく、空気中に漂う微粒子を吸いこむこと全般が呼吸器にとって非常によくない。
  • ◎美白剤であるハイドロキノン配合の製品を使うときは白斑(白ナマズ)やお肌への刺激というリスクがあることを知っておこう。そして少しでも「おかしい」と思ったらすぐに皮膚科へ。
  • ◎日焼けで赤くなっただけの状態なら、抗炎症・美白・抗酸化成分が配合された化粧品で素早くケアすればメラニン定着を防げることもある。ただし、お肌に傷があったら止めたほうが無難。
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