美白剤

お肌にメラニンを溜め込まない
美白剤の種類とそのはたらきとは

美白剤とは特殊配合成分の一種で、紫外線などによるメラニンの生成を抑え、その沈着を防ぐ効果のある成分です。美白成分、ホワイトニング成分とも呼ばれます。「美白」とはいっても、もともとのお肌の色よりもっと白くしたり、ソバカスやシミをすぐに消したりするような強い作用はありません。あくまでもその人本来のお肌の色をキープできるよう、地道に作用するといった性質のものです。

美白の方法にはいろいろあります。メラニン生成プロセスを阻害したり、溜まったメラニンの色を少しずつ薄くしたり、ターンオーバーを活発にしてメラニン排出を促したり。2012年10月現在では、メラニン生成を抑えるタイプの美白剤の研究が活発に進められています。

化粧品に使われる美白剤には以下のようなものがあります。

1. ハイドロキノン(表示名称:ハイドロキノン)
ハイドロキノンは米国で最もよく使用される水溶性の美白剤で、日本では2001年以降に化粧品に使えるようになりました。

メラニンの生成に欠かせないチロシナーゼという酵素のはたらきを阻害して美白します。メラニンは、その前段階物質であるチロシンやドーパにチロシナーゼが作用することによってできます。ハイドロキノンはチロシナーゼよりも先にチロシンやドーパに結合し、チロシナーゼが結合できないようにするため(競合阻害)メラニンができなくなるというわけです。

肝斑(かんぱん)に有効という報告も多い優秀な美白剤なのですが、日本人では刺激を感じる人も多く、そのせいでかえってシミの色が濃くなってしまうケースがあります。また、ハイドロキノンによるメラノサイト損傷が原因で白斑(皮膚の色が白く抜けた状態)ができることもあり、使用には注意が必要です。こうしたハイドロキノンの作用を穏やかにし、使いやすくしたのがアルブチンという美白剤です。

2.ビタミンC誘導体
ビタミンC誘導体はもっとも代表的なメラニン生成抑制剤として古くから重宝されてきました。メラニンはドーパ、ドーパキノン、メラニンという順番で変化するにつれて黒さを増しますが、ビタミンC誘導体はドーパキノンをドーパに逆戻りさせる(還元する)ことができます。(用語集「メラニン色素」も参照のこと)また、濃い色の酸化型メラニンを還元して、色の淡い還元型メラニンにすることでシミなどを薄くする作用も期待できます。

ビタミンCにも同じようなはたらきがありますが、ビタミンCをそのまま化粧品に配合してもすぐに壊れてしまいます。そのため、ビタミンCをほかの物質と結合させて壊れにくくした「誘導体」にしてから配合するのです。よく使われるビタミンC誘導体には以下のようなものがあります。

1)アスコルビルグルコシド(表示名称:アスコルビルグルコシド)

L-アスコルビン酸にグルコースを結合させた水溶性の成分です。肌に長時間留まれるところから「持続型ビタミンC誘導体」と呼ばれます。皮膚の中で「α-グルコシダーゼ」という酵素によって分解されてビタミンCになったときに美白効果を発揮しますが、安定性がよすぎて酵素で分解されにくいことがあるのが難点です。

2)アスコルビルリン酸エステル塩(表示名称;リン酸アスコルビルMg、リン酸アスコルビル3Na)※リン酸アスコルビル3Naは、「アスコルビルリン酸Na」という表示名称に変更予定(2012年10月現在)

アスコルビン酸(ビタミンC)とリン酸が結合したものに、マグネシウムが結合したのがリン酸アスコルビルMg。マグネシウムの代わりにナトリウムと結びついたのがリン酸アスコルビル3Na。どちらも水溶性。肌に吸収されたあと皮膚内の酵素ホスファターゼが作用して、マグネシウムやナトリウムからビタミンCが切り離されてビタミンCの美白作用が現れます。アスコルビルグルコシドよりも美白剤としてはたらける時間は短いとされます。

3)パルミチン酸アスコルビル(表示名称:パルミチン酸アスコルビル)

パルミチン酸とアスコルビン酸が結びついた油溶性の成分です。ビタミンC効果と油脂類に対する抗酸化性があり、原料は独特の臭いをもつ粉末状をしています。

4)テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(表示名称:テトラヘキシルデカン酸アスコルビル)

イソパルミチン酸とアスコルビン酸が結びついた油溶性の成分です。ビタミンCは油溶性のほうが水溶性のものより皮膚への吸収はよいのですが、この成分をオイルなどにたっぷり配合するとベタ付きが強くなって使用感が損なわれるという欠点があります。

3.コウジ酸(表示名称:コウジ酸)
味噌、醤油、酒などの醸造に携わる人の手が白いことがヒントとなり、チロシナーゼを抑制する物質として1907年に日本の科学者によって麹(こうじ)から見つけ出された成分。三省製薬(株)が美白成分として開発を行い、1988年にシミの原因となるメラニンの生成を抑えシミ・ソバカスを防ぐ有効成分の第1号として承認されました。

メラニン生成のキー酵素チロシナーゼが働くためには銅イオンが必要ですが、コウジ酸はその銅イオンをキレート作用によってチロシナーゼから奪い取ります。その結果チロシナーゼのはたらきが鈍り、メラニンができるのも遅くなります。また、メラニンの前段階物質であるチロシンがメラニンに変わるための化学変化そのものを阻むはたらきもします。

しかし、動物実験で肝がんを引き起こす可能性があるという報告があり、2003年3月厚生労働省の通達により医薬部外品(薬用化粧品)への使用が一旦中止されました。その後、化粧品メーカーがコウジ酸の安全性を確認する追加試験を行い、化粧品原料として安全であることを証明。2005年にはふたたび医薬部外品への配合が認められました。

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4.アルブチン
1)β-アルブチン(表示名称:アルブチン)
ハイドロキノンの優れた脱色作用に着目し、ハイドロキノンの欠点である皮膚刺激性と酸化されやすい性質を配糖体にすることにより解決した美白成分。1990年以降の美白化粧品ブームのきっかけとなった成分でもあります。

チロシナーゼやチロシナーゼ関連タンパク質TRP-1(Tyrosinase related protein-1)が色の濃いユウメラニンを作るはたらきを弱めることで色素沈着を抑えます。ハイドロキノンより刺激がなくなった分、美白作用は弱くなりました。

2)α-アルブチン(表示名称:α-アルブチン)
β-アルブチンより新しく開発された美白剤。ハイドロキノンにブドウ糖を結合させて作ります。江崎グリコ(株)とペンタファーム ジャパン(株)が共同開発し、江崎グリコが製法特許を出願中(2012年10月現在)。従来のβ-アルブチンに比べて10倍以上強力にメラニンの合成を阻害するということで注目されています。

5.エラグ酸(表示名称:エラグ酸)
ライオン(株)が発見し1996年に認可された美白成分で、医薬部外品に配合されます。チロシナーゼがはたらくために必要な銅イオンをキレート作用によって奪い、チロシナーゼの活動を抑えてメラニン生成を防ぎます。

ブラックベリー、ラズベリー、イチゴ、クランベリー、クルミ、ペカン、ザクロ、クコその他数多くの野菜や果物に含まれています。没食子酸から合成もできますが、化粧品原料としてはタラというマメ科植物の鞘(さや)から抽出したものが多く使われています。抗酸化作用もあり、総合的なはたらきで美白効果をもたらします。

6.フェニルエチルレゾルシノール(表示名称:フェニルエチルレゾルシノール)
ヨーロッパアカマツに含まれるピノシルビン(ポリフェノール成分)を基に合成した美白成分で、ドイツのシムライズ社によって開発されました。メラニン生成のキー酵素であるチロシナーゼのはたらきを抑えることによって美白します。

チロシナーゼ酵素の活性阻害率を測る試験では、ハイドロキノンの約2100倍、アスコルビン酸・コウジ酸の約2400倍、アルブチンの約7000倍の効果があるという結果が報告されています。また、ユウメラニン生成に関わるTRP-1のはたらきを抑える効果もあります。ハイドロキノンより細胞毒性が低く、トコフェロール(ビタミンE)と同じくらいの抗酸化力があり、非常にバランスのよいアンチエイジング美白成分とされます。

7.油溶性甘草エキス(表示名称:甘草エキス、カンゾウ根エキス)
甘草(Glycyrrhiza glabra)の根を無水エタノールに浸して得られたエキスを酢酸エチルで処理してできる美白剤。主成分としてグラブリジン、グラブレンなどを含み、ドーパやドーパキノンがメラニンに変わるための化学反応を抑えることで美白します。また、チロシナーゼ関連タンパク質(ドーパクロムトートメラーゼ)の作用も抑えます。

モルモットに人工紫外線(UV-B)を当てる試験では、10%ハイドロキノンより1%の本成分がメラニン生成をより強く抑えたという報告もあります。また、色素細胞内のチロシナーゼの量を減らす作用もあります。

女性の左右の頬に対照的に現れることが多い肝斑(かんぱん)というシミに、多施設二重盲検法(注1)の臨床試験が行われたことがありました。12週間連続使用した結果、肉眼・機械測定の両方で明らかに改善が認められました。多施設二重盲検法の臨床試験で肝斑への有効性が証明された美白成分はこの油溶性甘草エキスだけです。(2012年10月現在)

注1:多施設二重盲検法 複数の施設で行う二重盲検法。二重盲検法とは、試験成分入りのサンプルとそうでないサンプルどちらを用いたのか、被験者だけでなく医師、データ解析者など投与側の人間にも明らかにされない検査法のこと。

8.リノール酸(表示名称:リノール酸)
大豆油に多く含まれる必須不飽和脂肪酸。チロシナーゼの作用を阻むのではなく、チロシナーゼを構成するタンパク質の分解を早めることでチロシナーゼの数を減らすはたらきをします。メラニンを作るための酵素が減れば、それだけお肌に沈着するメラニンも少なくなります。

モルモットの皮膚に紫外線を当てる試験では、チロシナーゼの「作用」を阻害してメラニン沈着を防ぐ作用は見られなかったのですが、最終的に皮膚に沈着するメラニン量は明らかに減っていたことが確認されています。

9.カモミラET(表示名称:カミツレエキス)
カミツレという植物をスクワランに浸して得られたエキスで、メラノサイトを刺激するエンドセリン1という物質のはたらきを阻害します。花王(株)が開発し、1999年に認可されました。「カモミラET」の名称は花王製品の商品説明にのみ使われ、その他のメーカーの商品説明では「カミツレエキス」と書かれます。

エンドセリン1はメラノサイトに「チロシナーゼを活性化させろ」という指令を出す物質なので、そのはたらきを抑えれば結果的にメラニン生成を抑えることができます。UV-Bによってメラニンが沈着した人の肌をサンプルにした臨床試験では、本成分0.5%配合クリームを14日間使用することで明らかに色素沈着が改善されました(22例中9例の改善)。

10.トラネキサム酸(表示名称:トラネキサム酸)
オーラルケア製品に止血剤として配合されることで有名な成分です。メラニンの製造工場であるメラノサイトにメラニン生成に必要な情報が届かないようにする作用があります。

1979年の報告によれば、肝斑患者12名が内服したところ、8週間以上で全員に色素沈着の改善が見られました。モルモットの皮膚に紫外線照射する実験でもトラネキサム酸入りの外用薬は色素沈着に有効と報告があり、人での試験でも同じ結果が出たのを受けて外用美白剤として認可されました。

11.レチノイン酸(表示名称:トレチノイン)
お肌の角質層のターンオーバーを促し、表皮に溜まったメラニンの排泄を早める美白剤です。シミ、シワ、日光角化症などへの有効性が示され、米国では抗老化剤として販売されています(購入には医師の診断と処方が必要)。

ビタミンA(レチノール)の誘導体で、お肌への作用の強さはビタミンAの約50~100倍ともいわれます。日本では未認可なので未承認医薬品(未承認薬)の扱いですが、皮膚科の一部ではこのレチノールを使ったトレチノイン療法が行われています(2012年10月現在)。

レチノイン酸にトコフェロール(ビタミンE)をエステル結合させたレチノイン酸トコフェリル(表示名称:レチノイン酸トコフェリル)という美白剤もあります。レチノイン酸よりも効果は弱いのですがその分刺激も弱く、日本でも化粧品に配合することができます。

12.ルシノール(表示名称:ルシノール)
モミの木に含まれる物質を利用して合成する薬用美白剤。(株)ポーラが開発し、1998年に当時の厚生省より認可されました。酵素チロシナーゼがメラニンの前段階物質に取りつくのを邪魔することで(競合阻害)メラニンができるのを抑えます。また、紫外線による色素沈着を抑えるはたらきがあるとの臨床実験報告もあります。

光老化や色素沈着を防ぐべく働いてくれる日焼け止めや美白剤。最近はその進化も目覚ましく、たとえばノンケミカルの日焼け止めで課題とされてきた白浮きもかなり改善されてきています。これは主にナノテクノロジーのお陰なのですが、一方でナノ粒子の安全性について不安に思う声も多く聞かれます。実際に化粧品を選ぶとき、ナノテクについてはどのように考えればよいのでしょう?

(2012年10月初出)

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