油脂

動植物から採取した油(液体)と脂肪(固体)をひとまとめにして油脂と呼びます。分子の構造としては、グリセリン分子1個に脂肪酸分子が3個くっついたトリエステル(トリグリセリド)という形をしています。スクワレンのような炭化水素も「油っぽい」ので油脂と呼ばれることがありますが、油脂と炭化水素は化学構造も性質もまったく違います。

化粧品に使われる代表的な油脂には、以下のようなものがあります。(カッコ内は原料)

●植物性油脂
アボカド油、アーモンド油、オリーブ油、ゴマ油、コムギ胚芽油、サフラワー油(紅花)、シアバター(シア)、ツバキ油、パーシック油(アンズやモモの種子)、ヒマシ油(トウゴマの種子)、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヤシ油、ローズヒップ油(野バラの種子)

●動物性油脂
馬油、タートル油(アオウミガメ)、ミンク油、卵黄油

●油脂の配合目的と効果効能

  1. 肌や毛髪に柔らかさ・なめらかさを与える
  2. 油性の汚れを溶かし込んで肌から洗い流し、肌を清潔に保つ
  3. 肌をこする指や器具の滑りをよくしてマッサージ効果を上げる
  4. 肌に水をはじく膜(疎水性皮膜)を作り、有害物質が肌に入り込むのを防ぐ
  5. 外気が冷たくて乾燥しているとき、肌から水分が失われるのを防ぐ
  6. 紫外線吸収剤など、特殊な成分を溶かし込む
  7. 過脂肪剤として配合され、皮膚や髪を油分で保護する

化粧品の酸化を防ぐ
「すいてんの術」とは

油脂の中には、原料として使用する前に水素(H)を添加されるものがあります。このような油脂は「水添(すいてん)油」「硬化油」と呼ばれます。化粧品原料としては、硬化ヒマシ油が古くから知られています。

水添が必要なのは、不飽和結合が多いために酸化 が起きやすい油脂です。不飽和結合とは原子同士がお互いに2本以上の手を出しあって結合していること。油脂の場合だと炭素(C)同士が不飽和結合しているのですが、この結合は反応性が高い(ほかの物質と反応しやすい)ため、すぐに酸素に割り込まれてしまいます(酸化)。

そのような油脂を化粧品に使いたいときはどうすればよいでしょう? 答えは、酸素の割り込む余地をなくしてしまう、です。反応性の高い不飽和結合をあらかじめ切ってしまい、そこに水素を持たせておけば酸素が簡単には割り込めなくなります。

硬化油にはイヤな臭いが軽いという利点もあります。酸化が抑えられるので酸化臭が出にくくなるんですね。さらに、水素を加えるとその油の融点(固体が液体になる温度)が上がって、液体から固形になることも臭い軽減に役立っています。臭いの原因物質は固体のときより液体のときのほうが空気中に出やすいためです。

酸化と水添処理のイメージ

硬化油は、食品としてはあまり摂取しないほうがよいといわれます。成分の中に「トランス脂肪酸 」という物質を含んでいて、この脂肪酸を大量に食べつづけると心疾患のリスクが高まるとされているのです。マーガリンやショートニングも硬化油で、それらを大量に消費する地域では規制も始まっています。

でも、化粧品原料として使う分にはそれほど気にする必要はありません。化粧品はお肌に乗せるものなので、それが心疾患リスクを上げるとは考えにくいからです。むしろ、酸化しやすい油脂を水添せずそのまま化粧品に配合するほうが、お肌にとってよくないといえます。

(2011年10月初出)

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