高級脂肪酸・高級アルコール

石鹸の原料としてもおなじみ
高級脂肪酸の特徴

脂肪酸は天然の油脂ロウの主要成分のひとつ。化学式ではRCOOHで表されます。天然の油脂やロウを加水分解 して作りますが、化学的に合成されたものもあります。化粧品に利用されるのは、主に「高級脂肪酸」と呼ばれるもの。これは、分子の中に炭素を12個以上持っている脂肪酸のことです。炭素数が10以下だと低級脂肪酸となり、こちらは化粧品にあまり利用されません。(注1)

低級脂肪酸が化粧品にあまり使われないのは、お肌に刺激があるから。脂肪酸というものは炭素数が少なくなるにつれ、その性質が油というよりは酢酸(酢に含まれる酸っぱさの成分)に近くなってゆきます。そうなると少し水となじみやすくなり、汗と混ざって肌に触れ、刺激になるといわれています。高級脂肪酸にはそのような刺激性がないので使いやすいのですね。でも、低級脂肪酸もアルコールと結合させたエステルという形でなら化粧品原料になることもあります。

そのほか、高級脂肪酸の中でも分子の中に不飽和結合があるかないか、あるとしたらいくつあるのか、分子の中にヒドロキシル基水酸基、-OH)があるかどうかなど、条件によって性質は変わり、使い方も違ってきます。たとえばエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)。サプリメントでも人気の魚油に含まれる高級脂肪酸ですが、どちらも分子の中に不飽和結合を5個以上持っている高度不飽和脂肪酸です。そのため、空気に触れるとたちまち酸化しはじめます。このような脂肪酸は魚油という形で化粧品原料になることはあっても、脂肪酸そのままの形で使われることはまずありません。

化粧品に使われる代表的な高級脂肪酸類には以下のようなものがあります。

●飽和脂肪酸(不飽和結合がない)
ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸(ステアリン酸の異性体)、ヒドロキシステアリン酸

●不飽和脂肪酸(不飽和結合がある)
オレイン酸、リノール酸、ウンデシレン酸

●高級脂肪酸の配合目的と効果効能

  1. 油溶性成分のひとつとして、肌や毛髪に柔らかさ・なめらかさを与える
  2. 石鹸の原料になり、肌を清潔に保つ
  3. クリームや乳液を作るとき、アルカリ剤と一緒に配合されることで乳化剤の役割をはたす(おしえて!おそらさん「界面活性剤はどんなものに使われているの?」「反応乳化」の部分を参照のこと)
    ※これらのほか、エステル油や界面活性剤の原料(親油基)として使われるなど、化粧品の「原料」を作るときにも脂肪酸は欠くことのできない成分です。

注1 炭素数11のように炭素数が奇数の脂肪酸は自然界にわずかしか存在せず、高級低級を区別するときにも考慮されない。ただ、炭素を奇数個持った脂肪酸を化学的に合成することはできる。

油性原料の高級アルコール
水にもほんの少し、なじみます

分子の中に炭素を6個以上持ち、かつヒドロキシル基(-OH)をひとつ持っている(一価)アルコール のことを高級アルコールと呼びます。脂肪酸と同じく古くから化粧品作りに利用され、特にクリームや乳液には欠かせない原料です。天然油脂を原料とする脂肪アルコールと、石油化合物を出発原料として合成された、合成アルコールの2種類に大きく分けられます。

同じアルコールでも、エタノールやグリセリンは低級アルコールと呼ばれます。こちらは高級アルコールと違って親水性。エタノールは手作り化粧品に精油などを溶かし込む溶媒として利用されることもありますが、実は親油性はそんなに強くないんです。また、グリセリンはほとんど油となじみません。これは、低級アルコールが炭素を5個までしか持っていないのが主な原因。一般に、物質というものは炭素数が増えるほど水の性質から離れてゆきます。炭素数の多い高級アルコールが親油性で、炭素数の少ない低級アルコールが親水性なのはこのためです。

ただ、高級アルコールにまったく親水性がないかというと、そうでもありません。その証拠に、高級アルコールは乳化剤をサポートする乳化助剤としてよく利用されるのです。炭素数が多くて水には溶けないはずなのに、なぜでしょう? その答えは「ヒドロキシル基」にあります。

ヒドロキシル基の構造は「OH」。これは水の「H2O」とよく似ていますね。物質は、分子構造が似ているもの同士はなじみやすいという性質があります。つまりヒドロキシル基を持っている物質は全体的には油性でも、OHの部分にだけは、ほんの少し、親水性があるんですね。そのため、高級アルコールも本格的な乳化はできませんが、乳化剤のサポートくらいはできるというわけです。

化粧品に使われる代表的な高級アルコールには以下のようなものがあります。(カッコ内は原料)

●脂肪アルコール
ラウリルアルコール(ヤシ油)、セタノール(セチルアルコールのこと)(マッコウクジラ油)、セテアリルアルコール(セトステアリルアルコールのこと)(マッコウクジラ油)、ステアリルアルコール(鯨ロウやマッコウクジラ油)、オレイルアルコール(マッコウクジラ油)、ベヘニルアルコール(ナタネ油)、ラノリンアルコール(ラノリン)

●合成アルコール
ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール
※合成アルコールは合成の過程が複雑なため、出発原料がひとつに限定されないことが多い。

●高級アルコールの配合目的と効果効能

  1. 油性原料として化粧品に撥水性(はっすいせい)を与え、皮膚を保護する
  2. 乳化助剤としてはたらき、乳化製品の状態をより長く安定させる
  3. 製品の硬さを調節したり、種類によってはオイルの延びや感触をよくしたりもする(粘度調節)

たくさんの原料について、一度に頭に入れるのはなかなか疲れますね...。だから、今回はコラムでちょっと息ぬき! 私たち日本人がどんな風にお化粧してきたのかという歴史的なことを、原料の話も交えていろいろ見てゆきましょう。

(2011年10月初出)

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