分散・可溶化

リキッドファンデの絶妙な色
分散の技術がお手伝い

粒状のものが、その粒とは形や性質が違うものの中にまんべんなく散らばっている状態(散乱)を「分散」と呼びます。粒が散乱するという点では乳化と似ていますが、乳化は「液体」同士が混ざっているのに対し、分散は「形態が違うもの」同士が混ざっています。日焼け止めミルクは乳液(液体)の中に紫外線散乱剤(固体)の微粒子が分散していますし、ヘアスプレーは気体の中に液体の微粒子が分散しています。

化粧品でもっともよく分散される粒子といえば「顔料」です。カラーメイクの色づけや、紫外線散乱剤としてもおなじみですね。しかし、この顔料の大きさや重さ(比重)、水や油へのなじみやすさなどは種類によってバラバラ。それらすべてをムラなく分散させるため、分散剤としての界面活性剤が必要なのです。

たとえばリキッドファンデーション。もともと分離しやすいエマルションに、さらに顔料という粒子を混ぜこまなければなりません。しかも顔料の重さ(比重)は種類によってさまざま。ただ混ぜるだけだとある顔料は容器の底に沈み、ある顔料は浮き上がってしまい、製品全体で一定の色合いが保てません。そこで、分散剤の出番です。顔料の界面に分散剤が取りつくと界面張力が弱まるので、顔料の表面が油や水となじみやすくなります。この「(油や水と)なじみやすくなる」現象を専門用語で「濡れやすくなる」と言いますが、濡れやすくなった顔料はエマルション内で浮きあがったり沈んだりせず、混ぜられたときの状態をそのまま保つことができます。封を切ったリキッドファンデーションの色が使い終わるときまで変わらないのは、分散の技術のおかげなのです。

光を反射しないほど小さな粒に
可溶化のヒミツとは?

油溶性ビタミンやエッセンシャルオイルが配合された化粧水。水溶性の原料入り化粧オイル。これらのアイテムの多くには「可溶化」の目的で界面活性剤が使われています。可溶化とは、ある液体に本来なら混ざらないはずの物質を、透明かつ均一に混ぜこむ技術のことです。

たとえば水溶性リキッドに油溶性成分と界面活性剤を加えると、油溶性成分は界面活性剤の作った極小サイズの囲い(ミセル)の中に取りこまれたり、吸着されたりします。このミセルはあまりにも小さいので目に見える範囲の光(波長の長い「可視光線」)をあまり反射できません。乳化で極小の粒になった物質も肉眼では見えませんが、それでも可視光線を反射するくらいには大きいので「白」という色を目で確認することができます。ところが可溶化のミセルはそれよりもっと小さい。そのため、ミセル内に取りこまれた油溶性成分も確認できなくなってリキッド全体が透明に見えるのです。

ただ、可溶化された物質は「ものすごく小さな粒」になったというだけで、完全に溶けたわけではありません。その証拠に、可溶化が行われた化粧水に紫外線ランプを当てると光の当たった部分が白く濁った筋になって見えます。これはホコリの舞う部屋に差した光がホコリに反射して筋になって見えるのと同じ現象で、チンダル現象といいます。化粧水中のミセルは可視光線をあまり反射しませんが、波長の短い紫外線は反射するので目に見えるのですね。これは可溶化が行われている化粧水かどうかを見分けるひとつの手がかりにもなります。

可溶化された化粧水かどうかを確かめるには、ビンごと軽く振ってみるという手もあります。液がさかんに泡だって、その泡がなかなか消えないようなら可溶化されている可能性大。ただし、サポニンなどの天然界面活性剤を多く含む植物成分が保湿目的で配合されているような化粧水もあります。そういった場合もよく泡立つので、早合点しないよう成分欄をよくチェックしてくださいね。

界面活性剤が化粧品作りに役立つことは分かった。量も少しだし、そんなに神経質にならなくてもよいのかもしれない。でも、「界面活性剤不使用!」を売りにしているアイテムもあるし、やっぱり少しは気になる。化粧品における界面活性剤とのお付きあい、どのあたりで線引きすればよいのかもっと知りたい!

(2011年7月初出)

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