紫外線吸収剤・紫外線散乱剤

地表には、約290~400nmの波長の紫外線が降り注いでいます。近ごろはワルモノ扱いされることも多い紫外線ですが、体内でのビタミンD合成や殺菌消毒など、たくさんのメリットを私たちに与えてくれる存在でもあります。ただ、こと美容に関しては悪影響のほうがはるかに大きいので素肌にまともに日光を浴びるのは止めましょう、ということですね。(紫外線が肌に与える悪影響については、「お肌と紫外線」参照のこと)

お肌を紫外線から守ってくれる化粧品が日焼け止めです。その中で紫外線ブロックをしてくれるのは主に「紫外線吸収剤」「紫外線散乱剤」という原料。これらのはたらきや、具体的な原料名などについて見てゆきましょう。

変身したり発熱したり
紫外線吸収剤は忙しい

紫外線吸収剤とは、紫外線のエネルギーを自らの中に取りこんで化学的に処理するタイプの日焼け止め成分のことです。分子構造の中に有機物を含む有機化合物が多く使われます。

紫外線吸収剤は、取りこんだ紫外線のエネルギーを熱や赤外線に変換して放出したり、自分自身の分子構造を一時的に変えるために消費したりします。紫外線エネルギーを自分がムダ遣いすることで、お肌に影響しないようにしているんですね。ちなみに、熱に変換するといってもお肌が熱く感じるほど温度が高まるわけではありません。

紫外線を浴びている間中ずっと化学変化を起こし続けるため、時間が経つとどうしても壊れるものが出てきます。壊れた分子はもう紫外線吸収剤としてはたらけません。「日焼け止めは定期的に塗り直しましょう」と言われるのは、こういう理由も大きいのです。

紫外線のエネルギーはお肌のみならず、化粧品そのものにとっても大敵。色素を変色・退色させたり、化学変化を起こして品質を低下させたりするためです。化粧品やその包装材に紫外線吸収剤をうまく使うと、これらの不都合も避けることができます。

●紫外線が化粧品に及ぼす悪影響の例

  • 化粧品用として認可されているタール色素は安全性を重視しているので光に対して弱いものが多く、紫外線に長いあいださらすと変色・退色する
  • ネイルエナメルの皮膜形成剤であるニトロセルロース(硝化綿)が紫外線によって粘度が低下したり黄ばんだりする
  • 基礎化粧品の基剤が分解されて質感が変わる
  • 香料が変質して匂いが変わる
  • 配合された油脂酸化されてお肌に刺激になったり、臭くなったりする
  • 容器がもろくなって壊れやすくなる

紫外線吸収剤は無色透明なので白浮きがなく、また製品に配合したときの塗り心地もなめらかです。そのため、紫外線散乱剤と組み合わせると高いSPF値と使い心地の良さを兼ねそなえた製品作りに役立ちます。一方、吸収できる紫外線の量や種類に限りがあり、化粧品への配合量も法律で制限されています。特にUV-A(長波紫外線)を吸収できるものが少なく、そのため紫外線吸収剤だけでSPF値やPA値の高い製品を作るのは難しいのです。

また、紫外線吸収剤は有機化合物なので人によってはお肌に刺激を感じることもあります。紫外線吸収剤が壊れて別の物質になったときの安全性や、環境への負荷(内分泌攪乱物質の疑い、水棲生物への蓄積など)も心配される点です。

日本国内で化粧品によく使われる紫外線吸収剤は以下の3種類で、紫外線吸収剤配合アイテムの約75%にこれらが配合されています。

1. 4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン(表示名称:t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン)
主にUV-Aを吸収する数少ない吸収剤のひとつで、UV-A吸収剤として最もよく使われています。薄黄色~黄色の粉末状で油にわずかに溶け、水、アルコールには溶けません。化粧品基準では「すべての化粧品に配合の制限がある成分」に分類されています。

2. パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(表示名称:メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)
主にUV-Bを吸収します。淡黄色の粘りけのある液体で、わずかに独特の匂いがします。油には溶けますが、水には溶けません。日焼け止めの感触の改良に配合されているシリコーン油との相性もよく、日本で最もよく使われている紫外線吸収剤です(2012年10月現在)。

強力なUV-B防御効果を持ち、UV-A吸収剤や紫外線散乱剤と組みあわせて配合されます。化粧品基準では「化粧品の種類により配合の制限がある成分」に分類されています。

3. 2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(表示名称:オキシベンゾン-3)
UV-A、UV-B両方を吸収できる紫外線吸収剤。白~淡黄色の粉末状で、油によく溶け、水には溶けません。高いSPF値を出したい製品によく使われます。化粧品基準では「化粧品の種類により配合の制限がある成分」に分類されています。

このほかの紫外線吸収剤については以下の「化粧品基準」をご参照ください。

化粧品基準(別表第4が紫外線吸収剤)別ウィンドウで開きます(PDF 約204KB)

●紫外線吸収剤の配合目的と効果効能

  1. 有害な紫外線を吸収して皮膚が炎症を起こしたり日焼けしたりするのを防ぐ
  2. 製品や包装材料が紫外線によって劣化したり変色・退色したりするのを防ぐ

UVをはね返す紫外線散乱剤
ナノ粒子の現状についても少し

紫外線散乱剤とは、粒子(主に白色顔料)が光を反射するはたらきを利用して紫外線の害がお肌に及ぶのを防ぐ成分です。二酸化チタン酸化亜鉛が代表的で、これらはファンデーションやフェイスパウダーに白い色を付ける色材(白色顔料)としてもよく使われます。ファンデーションやフェイスパウダーが日焼け防止になるとよく言われるのはこのためです。

紫外線散乱剤は紫外線吸収剤のように化学変化で紫外線を処理しないので、散乱剤そのものにムリな力がかかりません。そのため構造が壊れにくく長持ちです。吸収剤のように処理できる紫外線の波長を選ばないためUV-AもUV-Bも両方防げます。また、有機化合物ではないのでお肌の刺激にもなりにくいという優れた特長があります。

紫外線散乱剤の一番の欠点は白浮きです。二酸化チタンや酸化亜鉛は白色顔料でもあるので仕方がないのですが。また、塗ったときのなめらかさにも少々欠けます。そのため、SPF50+など高い数値の日焼け止めは紫外線吸収剤と組み合わせたものがほとんどとなっています。

ただ、白浮きはナノ粒子を利用するとかなり改善されます。粒子の直径が小さくなると、可視光線を反射しにくくなるので白い色も肉眼では認識しづらくなるためです。50nm(ナノメートル)以下の微粒子だと通常の粒子(200~300nm)よりかなり透明感が出るうえに、紫外線散乱効果も高くなります。

イメージ

良いことずくめに見えるナノ粒子ですが、実は安全性について確実なことはまだ分かっていません(2012年10月現在)。サイズが小さすぎるので皮膚のバリア機能を突破してお肌の深いところにまで入り込んでしまうのでは、と懸念する声もあります。

しかし、酸化チタンのナノ粒子については試験報告件数が多く、お肌の上から塗っても角質層の深いところまで浸透しないことが確認されています(注1)。その一方で、皮下注射した場合(動物実験)や、呼吸器から取りこんだ場合の安全性については危険性を指摘する報告もあり、これからも実験を重ねて検討すべき状態にあります。

光触媒作用についても少し注意が必要です。酸化チタン、酸化亜鉛には光触媒によって有機物を分解する作用があります。この性質は、住宅の外壁汚れを分解するコーティング剤開発などに役立っていますが、お肌に触れるものにそういう作用があるのは好ましくありません。

酸化チタンには「ルチル型」と「アナターゼ型」の2種類があるのですが、光触媒作用が強いのはアナターゼ型のほうです。化粧品にはルチル型が使われているのでもともと光触媒作用は低いのですが、化粧品に使われる酸化チタンの粒子はとても小さく、その分表面積の割合が大きくなるので光触媒の作用も強くなります。そこで、水酸化アルミニウムやシリカ、シリコーンなどで酸化チタンや酸化亜鉛の表面を処理し、光触媒作用を封じてから化粧品に配合するメーカーが増えています。

紫外線散乱剤として使用されるのは 無機顔料の酸化チタン、酸化亜鉛がほとんどです。それらについては以下をご参照ください。

色材原料 その1 1.白色顔料

●紫外線散乱剤の配合目的と効果効能

  1. 有害な紫外線を反射して皮膚が炎症を起こしたり日焼けしたりするのを防ぐ
  2. 製品や包装材料が紫外線によって劣化したり変色・退色したりするのを防ぐ

注1:「化粧品における安全性の取組み 2.ナノ粒子の安全性」別ウィンドウで開きます (PDF 約641KB)
※角質層への浸透についてはP26を参照

(2012年10月初出)

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