毛髪の構造

毛髪はちょうど巻き寿司のように、中心から外に向かって3層構造をしています。巻き寿司の具に当たる中心部分はメデュラ(毛髄質)。ご飯に当たる部分がコルテックス(毛皮質)。そして海苔のようにそれらをまとめているのがキューティクル(毛小皮)です。

毛髪の芯、メデュラ

毛髪の中心・メデュラは立方体の細胞が縦に細長く並んでいます。この細胞はタンパク質と脂質が主な成分。角化していないので比較的やわらかです。また細かい空気の泡を含んでいるので外からの刺激が加わるとすき間ができやすいのが特徴。メデュラにすき間ができると光が乱反射するので髪が白っぽく、くすんで見えてしまいます。

毛髪によっては、このメデュラがないこともあります。たとえば軟毛や赤ちゃんの髪の毛がそう。また、硬毛でも細すぎるとメデュラがなかったり、ところどころ切れていたりします。だから、太い毛髪ほどメデュラがしっかりしているともいえます。メデュラの役割についてはまだはっきり分かっていませんが、毛髪のうるおいや弾力性を守っているとも言われます。

毛髪の色や性質を決める、コルテックス

メデュラの外側にはコルテックスがあります。ここは毛髪の重さの85~90%を占める重要な部分。メラニン色素が含まれ、毛髪の色や性質はほとんどここで決まります。コルテックスは、らせんのようになった線維状の硬ケラチンが何重にもより合わさったロープのようなものが、さらに何本も集まって形づくられています。ですから縦に引っぱる力にはとても強い。太さ0.08ミリの健康な髪の毛1本は130~180グラムの重さに耐え、10本まとめれば何と1キロ以上のものを吊りさげられます。

コルテックスの硬ケラチン線維のすき間は、細胞間充物質というものが埋めています。結晶になっていない軟らかいケラチンで構成され、セメントのように硬ケラチン線維を固めるはたらきをしています。パーマの薬剤は、主にこの細胞間充物質のシスチン結合に作用するようです。

毛髪の守護神キューティクル
その強さのヒミツとは?

シャンプーのCMなどでおなじみキューティクルこと毛小皮。ここは毛髪の一番外側をカバーする部分で、毛髪全体の重さの10~15%を占めています。メラニン色素は含んでいませんが、その独特の光沢で毛髪に輝くようなツヤをもたらします。

キューティクルを形づくる細胞は硬くて平べったく透明で、1枚が厚さ0.5~1マイクロメートル、長さ45マイクロメートル(注1)。健康な毛髪だと、この細胞が6~8層をなしてコルテックスを取り巻き、これが毛髪の根元から毛先に向かってウロコのようにびっしり並んで内部を守るわけです。このウロコ模様は紋理(もんり)と言いますが、とても細かい模様なので肉眼で見ることはできません。

毛髪とキューティクルの構造図

1枚のキューティクルの細胞は、さらに3層に分かれます。内側から、エンドキューティクル(内小皮)、エキゾキューティクル(外小皮)、エピキューティクル(表小皮)という順です。これらのうち一番丈夫で、パーマやヘアダイなどの薬剤にも強いのは一番外側のエピキューティクル。厚さは10ナノメートルくらいで、リン脂質や多糖類が結合してできています。

キューティクルの強さには、F層というものが関係していることも最近になって分かってきました。F層とは脂肪酸とエピキューティクルのタンパク質が強力に結合したもの。外界と接しているエピキューティクルの表面を脂質でおおうことで水をはじき、なめらかなツヤも演出します。表面は硬く丈夫で、ヘアケア用品に配合されるエタノールにも負けませんし、石鹸・合成を問わず、シャンプーの成分で溶けたり変質したりすることはありません。

ダメージヘアーの原因になる
キューティクルの弱点とは?

このようにキューティクルはかなり丈夫なのですが、やはり弱点はあります。一番の敵は摩擦などの物理的な力。たとえば頭髪なら、もつれた髪に無理やりブラシをかける、シャンプーでゴシゴシこするなどすると壊れたりはがれたりします。また、ドライヤーのかけすぎや紫外線ヘアカラーやパーマもダメージの元です。こうしてキューティクルが傷つくとやわらかな毛髪の内部がむきだしになってしまい、水分やタンパク質が逃げだしてぱさついたり、枝毛切れ毛ができやすくなったりするのです。

硬くて丈夫なF層もアルカリ溶液へ長い間ひたし続けたり、パーマやヘアカラーのダメージが度重なったりすると取れてしまうことがあります。アルカリが、F層の成分を加水分解するからです。脂質のF層がなくなったキューティクルは水をはじくことができません。すると、髪の内部に余計な水分が入り込んで、細胞間充物質などを洗い流してしまうのです。

余計な水分は別のトラブルも引きおこします。毛髪のタンパク質は熱で傷むのですが、そのときに水分を多く含んでいればいるほど、より低い温度で傷み始めるのです。するとタンパク質はもろくなり、キューティクルの剥がれや枝毛切れ毛の原因にも…。だから、シャンプー後のびしょびしょ髪をすぐにドライヤーで乾かし始めるなんてもってのほか。まずはタオルドライでできるだけ水気を取って、最後の仕上げにドライヤーを使うのが賢いやり方です。

ヘアアイロンでサラサラストレートにしたり、パーマやカラーリングをしてみたり。髪を引っぱったりねじったり、時には逆毛を立てて…考えてみれば、お洒落なヘアスタイルは髪のダメージと引き替えに手に入るようなものかも。でもそこを何とか工夫して、髪の健康とお洒落を両立する方法を考えてみたいですよね?

注1 1マイクロメートル=0.001ミリメートル。つまり、0.5~1マイクロメートル=0.0005~0.001mm、45マイクロメートル=0.045mm となる。

(2009年9月初出)

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